■一言も喋らず艦隊を操る沈黙の知将アイゼナッハ
続いては、言葉を発さずに戦局を操るという異能を持つ指揮官エルンスト・フォン・アイゼナッハを紹介したい。オフレッサーが「肉体の怪物」なら、アイゼナッハはまさに「静寂の怪物」だ。
アイゼナッハは極端に無口であることから「沈黙提督」の異名を持つ。
余計なことはしゃべらないというレベルではない。「しゃべったほうがいいんじゃない?」と思える場面でもしゃべらないという、無口を通り越して、もはや変人とも思えるほどの個性的なキャラだ。
それでも艦隊戦では、指揮官として抜群の能力を発揮し、有能な提督たちが集うラインハルトの配下にあって活躍を続け、一度たりともその期待を裏切ることはなかった。
意思疎通は指を鳴らしたりうなずいたりすることで行い、艦隊指揮においても、野球のブロックサインのごとく、腕を動かしたりするだけで部下たちにサインを送って指揮をとる。
アイゼナッハの部下たちは相当訓練されているのか、指揮官の動きだけで指示を読み取り、実行に移す。この異常ともいえるチームワーク、どれだけの訓練を積めば可能になるのか想像すらできない。アイゼナッハもすごいが、その部下たちも化け物すぎる。
しかもアイゼナッハのすごいところは、明確に敗れている描写が作中にないこと。ラインハルト旗下の有能な提督たちであっても、敗れたり苦戦する描写があるが、アイゼナッハにはそれもない。
無言ゆえに、敗れている様子を描きにくいという作者の事情もあるのかもしれないが、アイゼナッハの化け物ぶりを表す証左ではなかろうか。
最終的にアイゼナッハは戦争終結まで生き残り、帝国元帥にまで昇進するのだから、まさに「沈黙の怪物」と呼ぶにふさわしいだろう。