映像も物語もホラーレベル…アニメ『まんが日本昔ばなし』本当に怖かった「鬼」にまつわるエピソードの画像
アニメ『まんが日本昔ばなし』Blu-ray第1巻(東宝) (c)2023 愛企画センター

 市原悦子さんと常田富士男さんが語り手を務めるテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』。1975年から1994年までの期間に、日本全国に伝わる1400以上もの童話や昔話が放送されてきた。幼いころ、同作を見て育ったという人も多いだろう。 

 幾多の昔話の中でとりわけ多くの子どもたちに衝撃を与えていたのが、一度見たら忘れられなくなる恐ろしい昔話の数々だ。中でも、古来から恐怖の象徴として描かれてきた「鬼」が登場する話は、トラウマ体験とも言えるほどに怖い。今回は、そんな「鬼」にまつわる怖い昔話を振り返ってみよう。

※本記事は作品の内容を含みます。

■ストーリーが怖いうえに後味も悪い『牛鬼淵』 

 最初に見ていくのは『牛鬼淵(うしおにぶち)』という話。舞台は、三重県大台町(旧宮川村)大杉の父ヶ谷に実在する牛鬼淵。この深い淵には、牛の頭と鬼の体を持つ妖怪・牛鬼が住み着いているという言い伝えがあった。

 ある夜、山で木こりの仕事を終えた若者と年寄りの2人が小屋で休んでいると、何やら人の気配がする。よく見ると、戸口に掛けてあるムシロの間から不気味な男が中を覗いていた。

 唐突に「何しとるんじゃ?」と話しかけてくる男。年寄りが「ノコギリの手入れをしとるんじゃよ。硬い木を切るんで傷むんでな」と答えると、男は「じゃあそのノコギリは“木”を引くんじゃな?」と妙な確認をし、一歩中に入ろうとしてくる。

 そこで警戒した年寄りが、「じゃがな、この最後のところについとる32枚目の刃はな、特別に“鬼刃”っちゅうて鬼が出てきたらひき殺すんじゃよ。見せたろか」と言うと、男は何も言わずに去っていった。そして、その翌晩も男が現れ「何しとるんじゃ?」と話しかけてくる。年寄りの木こりが同じようにノコギリの「鬼刃」について説明すると、去っていくのだった。

 不気味な出来事が続いた翌日、大木を切る作業中にノコギリの鬼刃が折れてしまう。刃を直すために里を降りることにするが、年寄りの忠告も聞かず、若者の木こりはひとりで小屋に残ることに。そしてその夜、やはりまた謎の男がやってくるのだった。

 すっかり酔っぱらっていた若者は昼間鬼刃が欠けたことを話してしまうが、それを聞いた途端、男が恐ろしい牛鬼に変化。そして、抱きかかえられるように淵の中に沈められてしまった。

 戻った年寄りは、淵に残された若者の服を見つけ「あれほど鬼刃が欠けたことは言うなと言うとったのに……」と忠告が届かなかったことを悔いるのだった。

 薄気味悪い牛鬼が質問を繰り返す不気味さや後味の悪い終わり方など、子どもたちを恐怖のどん底に突き落としたのも納得の『牛鬼淵』。だが、同時に「人からの忠告には耳を傾けよう」という教訓も得られる作品である。

■源頼光の四天王が対峙した凶悪な鬼『羅生門の鬼』

 『羅生門の鬼』もまた、恐ろしい鬼が登場する名作の一つだ。物語の舞台は、平安京の表玄関として圧倒的な存在感を放っていた羅生門。現在は、京都府南区唐橋羅城門町の花園児童公園内に石碑が残されている。

 平安の京都で暴れ回った鬼と言えば、大江山に住み着く酒吞童子。『羅生門の鬼』の主人公は、この鬼を倒したとされる源頼光配下の四天王(渡辺綱・卜部季武・碓井貞光・坂田金時)の1人、渡辺綱だ。

 ある蒸し暑い夏のこと、酒を飲みながらここ最近羅生門に現れるという鬼の話をしていた四天王。綱だけは鬼の存在に否定的で、最終的に綱が行って確かめることになった。

 雨の降る夜更け、綱は羅生門に行くも鬼らしきものはいない。だが、帰ろうとする綱に声をかけてきた女性が隙をついて巨大な鬼に変化。咄嗟に刀を振りかざし、鬼の太い腕を切り落とすと、鬼は「覚えておれ! その腕、7日の間に必ず取り戻しに行くからな」と逃げていく。

 腕を持ち帰った綱は、屋敷の警備を厳重にし腕を箱に入れて四六時中見張った。何も変化のないまま最終日の夜を迎えたが、そこに“綱の叔母にあたる”という老婆が訪ねてくるのだった。

 当の綱は記憶になかったが、羅生門の鬼の話を聞かせると老婆も喜んでくれ、鬼の腕も見たいと頼まれしぶしぶ見せることに。するとその瞬間、老婆は鬼に姿を変えて腕を掴み「しかとこの腕もらったぞ!」と高笑いしながら雲の上に消えていったのだった。

 綱の優しさが残念な結果を招いてしまったこの物語。和風な絵柄の鬼は見た目からして怖いが、ストーリーとしては起承転結もあり子どもでも楽しめる作品である。

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