
冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』は、「念能力」を使ったバトルが大きな魅力だ。「能力系統」や「制約と誓約」、「死後強くなる念」などの概念が絡み合い、戦闘はより複雑なものとなっている。そのため、ファンでも理解できないようなややこしい能力も少なくない。
中でもよく難解なものとして挙げられるのが、クロロ=ルシルフル、アルカ=ゾルディック、ツェリードニヒ=ホイコーロの能力だ。彼らの能力は発動条件やリスクが複雑で、その本質を理解するのはなかなか難しい。今回はこの3人の能力について、できるだけシンプルにおさらいしていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■作中最高峰の念能力!クロロ=ルシルフル「盗賊の極意(スキルハンター)」
幻影旅団団長・クロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」は、「他人の能力を本に封じ、それを使用できる」というチート級の能力だ。その分「制約と誓約」が強く、能力を盗むためには4つのステップを踏む必要がある。
「相手の念能力を実際に見る」、「その念能力について質問し、相手に回答させる」、「本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる」、「これら3つのステップを1時間以内に行う」の4つだ。これらを戦闘中に行うのは困難であり、ゼノ=ゾルディックもこの点を察して「戦いの最中に盗まれることはまずあるまい」と冷静に判断していた。
さらに、盗んだ能力を使用する際の制約もある。「盗賊の極意(スキルハンター)」を発動すると手元には本が出現し、能力をおさめたページを開いた状態で右手に持っておかなければならない。
これによって「右手の自由が利かない」と「複数の能力を同時使用できない」という厳しい制約が生まれている。
こうした制約を補うため新たに追加された能力が、「栞のテーマ(ダブルフェイス)」。使いたいページに栞さえ挟んでおけば、本を閉じた状態でも能力を維持できるというものだ。例えば、「番いの破壊者(サンアンドムーン)」を使用し、栞をはさみ、本を閉じたままその効果を持続させる。さらに、そのページ以外を開けば複数の能力を同時に使うこともできる。
ヒソカ=モロウとの戦いでクロロは、この「栞のテーマ(ダブルフェイス)」を駆使して複数の能力を切り替え続け、ヒソカに勝利している。クロロ曰く、「厄介な制約は増えた」らしいが、その内容についてはまだ明かされていない。
クロロは暗黒大陸に向かうまでに“国宝級のお宝を盗む”つもりでいて、そうすれば「盗賊の極意(スキルハンター)」はさらに強化されるらしい。登場するごとに複雑さを増していくクロロの能力だが、基本的な条件を整理・理解しておけば、入り組んだ描写も比較的理解しやすくなるはずだ。
■チート級で危険すぎるアルカ=ゾルディックの「おねだり」
ゾルディック家の一員であるアルカは危険すぎる力を持っており、そのせいで軟禁生活をさせられていたほどだ。その力は、作中では「おねだり」と「お願い」と呼ばれている。
流れはこうだ。アルカのおねだりを誰かが3回聞く。すると、別人格の「ナニカ」が現れてお願いを1つだけ聞いてくれる。しかも、このお願いには際限がない。実際に、「オレの代わりにこいつ殺して」「億万長者になりたい」といった現実離れした願いも叶えてくれる。
一見するととてつもなく便利な能力に思えるが、イルミは「ゾルディック家が滅びる程」とまで評した。なぜかというと、「お願い」と「おねだり」はある種の等価交換となっているからだ。
願いごとが大きなものだと、その次にアルカがするおねだりの難易度が跳ね上がるという恐るべきルールがある。特筆すべきは、大きすぎる「お願い」の責任を取らされるのは本人ではなく、別の人物だという点。なかなかに理不尽なルールである。
大したお願いではないと、「ダッコして」「アクシュして」といった可愛らしいおねだりになる。しかし、難易度の高いお願いの後だと、「肝臓ちょうだい」、「背骨ちょうだい」といった恐怖のおねだりになってしまう。
さらに最悪なことに、おねだりを4回断ってしまうと、「断った者」と「その者が最も愛している者」、お願いの規模によっては「その人物と一緒に過ごした時間が長い人」が一瞬で死亡してしまう。お願いが大きいほど犠牲者の数も増え、過去には67人が一斉に命を落としたケースもあったらしい。
ちなみに単行本33巻には、「あい 暗黒大陸出身です」という言葉が添えられたナニカのイラストが描かれている。そのため、今後「暗黒大陸」にて、この危険で不気味な能力の秘密が明かされることにも期待したい。