■“元アナ”の殻をぶち破った怪演『M 愛すべき人がいて』田中みな実
情報番組やバラエティで見せる「あざと可愛い」キャラで人気を博している、元TBSアナウンサー・田中みな実さん。
そのイメージを大きく覆し、女優として一躍脚光を浴びたのが、2020年に放送されたドラマ『M 愛すべき人がいて』での、姫野礼香(ひめのれいか)役である。
本作は、“平成の歌姫”・浜崎あゆみさんのデビュー秘話と、彼女をスターダムへと導いたエイベックスの敏腕プロデューサー・松浦勝人さんとの関係をフィクションを交えて描いた問題作である。
田中さんが演じたのは、マサ(三浦翔平さん)の秘書にして彼への異常な執着を抱くストーカー気質の女性・礼香だ。
右目にオレンジ色の眼帯をつけた強烈なビジュアルに、「ゆーーるさなーーーーーい!」をはじめとしたインパクト大の名(迷)セリフの数々……。アユ(安斉かれんさん)への嫉妬を募らせ、あらゆる姑息な手段で追い詰める姿は恐ろしく、まさに怪演そのもの。圧倒的な存在感で、“元アナウンサー”という枠を軽々と超えてみせた。
そのインパクトの大きさから、その後、礼香を主役としたスピンオフドラマ『L 礼香の真実』もABEMAで制作・配信されている。強烈なキャラクター・礼香は、女優としての田中さんのキャリアを象徴するものとなった。
■美しく冷酷、はまり役の原点『ラスト♡シンデレラ』菜々緒
ヒロインから悪女まで自在に演じ分ける菜々緒さん。その“悪女イメージ”を世間に強く印象づけたのが、2013年放送のドラマ『ラスト♡シンデレラ』での、大神千代子(おおがみちよこ)役だ。
物語の主人公は恋愛から遠ざかり、まるで中年男性のような“おやじ女子”・遠山桜(篠原涼子さん)。そんな桜の前に現れたのが、イケメン御曹司のBMXライダー・佐伯広斗(三浦春馬さん)だった。
第1話のラストで2人が思わぬ形で一夜を共にしたことから、大人の恋が一気に動き出す。お色気描写も話題を呼んだ、ちょっと刺激的なラブコメディだ。
そして、桜と対照的な存在として物語をかき乱すのが、菜々緒さん演じる千代子だ。若く美しい社長令嬢という肩書を持ちながら、幼少期に負った火傷のトラウマを抱え、自信の裏に深いコンプレックスを隠す“闇”のある女性だ。
思いを寄せる立花凛太郎(藤木直人さん)と桜の関係に嫉妬し、義弟である広斗をも巻き込みながら、桜を罠にかけていく。その冷徹さの奥に垣間見える哀しみと孤独。菜々緒さんの美貌と演技力が、単なる悪役ではない“魅せる悪女”を成立させていた。
のちに『サイレーン』や『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』などで確立されていく“美しく冷酷、だが哀しみを宿した女”というイメージの原点は、まさにこの『ラスト♡シンデレラ』にあったと言えるだろう。
嫌いなのに、目が離せない。いや、むしろどこか惹かれてしまう……。今回取り上げた4人の女優たちは、それぞれがそんな「悪女」という難役に果敢に挑み、強烈な存在感を残していた。
その挑戦が今の活躍へとつながっているのは間違いないだろう。これから彼女たちがどんな役を演じ、どんな表情を見せるのか? 今後も活躍から目が離せない。