
今をときめく人気女優たちが、かつて挑んだ「悪女」という難役。物語をかき乱す小悪魔的な言動、ヒロインへの嫉妬や策略、そして時おり見せる孤独や哀しみ……。憎らしいのになぜか目が離せず、気がつけば心を奪われてしまう。
今回は、そんな難役に真正面から挑み、新境地を切り開いた4人の女優たちをピックアップしてみた。視聴者に衝撃を与え、記憶に残ったあのキャラたちを、思い出しながら読んでいただきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■小悪魔キャラで大ブレイク『花のち晴れ』今田美桜
NHK連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインに抜擢され、今や国民的に知られる存在となった今田美桜さん。その知名度を一気に押し上げたきっかけが、2018年に放送された『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』での、真矢愛莉(まやあいり)役だった。
神尾葉子さんの『花より男子』の続編で、10年後の英徳学園を舞台に描かれた本作。
不動産王の令嬢で、英徳学園を牛耳るエリート集団「C5」の紅一点である愛莉は、神楽木グループの御曹司・神楽木晴(平野紫耀さん)を想うあまり、江戸川音(杉咲花さん)に激しい制裁を加えていく。
作中、晴にはぶりっ子全開、音には容赦ない嫌がらせ……その極端すぎる二面性で、物語を大きくかき乱した。
だが、愛莉は単なる悪役では終わらない。物語が進むにつれ、音との間に友情が芽生え、情に厚く素直で可愛らしい姿を見せはじめるのだ。それまでとのギャップ、今田さんのチャーミングな笑顔に、多くの視聴者が心を奪われただろう。
今田さん自身、“意地悪な役は初めてだったけど、いろんな面を持った女の子を演じられてすごくうれしかった”と語っており、「役が、私自身まで変えてくれた、“愛莉”は、そんな大切な存在です」とも振り返っている。
そんな魅力あふれるキャラ・愛莉は、“今田美桜”という女優の名を世に知らしめた記念すべき当たり役であった。
■王道ヒロインからの脱却『ブザー・ビート』相武紗季
一途で清純——デビュー以来、そんな「王道ヒロイン」のイメージが強かった相武紗季さん。
その殻を見事に打ち破り、新境地を切り開いたのが、2009年に放送された月9ドラマ『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』での、七海菜月(ななみなつき)役だ。
菜月は、プロバスケットボール選手・上矢直輝(山下智久さん)の恋人である。表向きは礼儀正しく、誰からも好かれるしっかり者だが、実は直輝の煮え切らない態度に不満を抱え、裏では彼のチームメイト・代々木廉(金子ノブアキさん)と関係を持つなど、裏切り行為も厭わない。
さらに、ヒロインの白河莉子(北川景子さん)にも巧みに接近し揺さぶりをかけるなど、なかなかの悪女ぶりを発揮。スレた表情でタバコをふかす姿や大胆な絡みの場面は、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えた。
相武さん自身も「それまではコソコソしてたのが、悪い役やってるやつでーすみたいな感じで、ちょっと吹っ切れた」と、冗談交じりに振り返っている。この菜月というキャラクターが、相武さんにとって大きな転機となったのは間違いないだろう。
現在、安達祐実さん、磯山さやかさんとトリプル主演を務めるドラマ『夫よ、死んでくれないか』でも、存在感を存分に発揮している相武さん。あの悪女役への挑戦が、彼女の今の幅広い活躍へとつながっていた。