
【連載】宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」第3回
突然ですが、あなたには「人生に影響を与えた作品」はありますか?
小説や漫画、映画、ドラマ、アニメ……。物語を描くメディアはたくさんあり、平成3年(1991年)生まれの私は、平成初期から様々な作品に触れてきました。
人生で初めて涙した映画は『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』。昭和~平成カルチャーを学ぶ“バイブル”だったのは、秋本治先生の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。物語はいつも、心を豊かにし、知恵を与えてくれました。しかし、どこか「向こう側の世界のこと」のように感じてもいました。
でも、ゲームだけは違ったんです。
画面の中で動くキャラクターと、自分が一体化するような感覚。レースゲームでカーブに差し掛かると、つい自分の体まで傾いてしまったり、シューティングゲームでは弾を避けようと無意識に身をひねってしまったり……バーチャルの世界と繋がれる唯一のメディア、それがゲームでした。
そんなゲームから、私はいくつもの特別な体験をしてきました。
特に印象的だったのが、第1回でも触れたように『ファイナルファンタジーX』(スクウェア/現スクウェア・エニックス)です。
物語の終盤で、ヒロインのユウナは仲間にした召喚獣を自らの手で倒すことになります。それは思い入れのある召喚獣との決別を意味し、その展開に胸が痛みました。攻撃コマンドを入力するたびに、彼女の心情と自分の気持ちが重なっていく感覚でした。
没入感の高いストーリーによって、私もパーティの一員として旅をしたかのような気持ちになり、「長い旅を終えた」というカタルシスとともに、自分自身の中の好奇心や冒険心に火が付き、精神的な成長を感じていました。
ゲームは私に、前に進む力を与えてくれる存在だったのです。
私に劇的な変化をもたらした作品は、『FF10』だけではありません。
中学生のときに出会った『バイオハザード4』(カプコン)も、特別な一作です。
『バイオ4』は、シリーズの中でもベストタイトルにあげる人も多い名作として知られ、世界のゲームメディアからも高い評価を受けています。
私が『バイオハザード』を好きになったのは幼少期。ホラー映画を見ているような気持ちで、兄のプレイを隣で眺めていました。
しかし中学生になると部活動などで私も忙しくなり、兄がプレイするタイミングにいつも居合わせることはできませんでした。そうしているうちに、いつの間にか兄は『バイオ4』をクリアしていたのです。
見届けたかった私はそれがとても残念で、文句をたれていたところ、兄にこう言われました。
「もうそろそろ自分でプレイしなよ。」
はじめは戸惑いましたが、『バイオ4』にはそれまでのシリーズとは違う「革新」がありました。