1983年に発売され、数々の名作タイトルが生まれてきた『ファミリーコンピュータ』。その魅力としてよく挙げられるのが、限られた音数で奥深いサウンドを生み出す「ファミコン音楽」だろう。
特に初期の頃は、クラシック音楽のアレンジ版がよく使われていたのも特徴だ。長年ピアノを習ってきた筆者は、ファミコン世代ではなく、その音楽に触れる機会もほとんどなかったのだが、ひょんなことから聴いたときには度肝を抜かれた。
ずっと慣れ親しんできたあの名曲が、まさかこんなアレンジになるなんて!? 今回はピアノ歴20年以上、音楽大学出身者でもある筆者が特に衝撃を受けた、ファミコンで「ビックリアレンジ」されたクラシック曲について紹介していこう。
■『シティコネクション』チャイコフスキーのピアノ協奏曲
まず取り上げたいのが、『シティコネクション』(ジャレコ)のメインBGM。チャイコフスキー作曲の『ピアノ協奏曲第1番第1楽章』をもとにしているのだが、こちらは筆者が聴いたものの中で個人的に一番度肝を抜かれたアレンジである。
原曲では、ホルンがおごそかに曲の始まりを告げ、すぐさまオーケストラとピアノが壮麗なサウンドを編み出していく。数あるピアノ協奏曲の中で特に人気が高いのにもうなずける、豪華絢爛な名曲である。「クラシック音楽」と言われたとき、多くの人がなんとなく思い浮かべるイメージが詰まっているといってもいいかもしれない。
『シティコネクション』でこの曲は、メインのメロディーはほぼそのままでアレンジされているのだが、ちょっと聴いただけで「こんなに変わるの!?」と驚かされてしまった。先ほど挙げた「壮麗」といったイメージとは真逆の、コミカルかつ親しみやすい仕上がりになっているのだ。
大きな特徴としては、もともと3拍子だった原曲を4拍子にしているところだろう。そして、アップテンポになっているだけでなく、パーカッションの刻み方やベースラインが抜け感を演出している。原曲では壮大だったメロディーも、どこかほのぼのとしていて聴いていてほっこりしてしまう。衝撃の大変身だ。
音楽関係の知り合いを全員集めて、メインのメロディーが出てくる直前まで聴かせて、「この曲の元ネタは?」クイズをしてみたい。知らなければ絶対分からないと思う。『シティコネクション』をプレイしたことがあって原曲を知らない人にも、ぜひとも一度元ネタを聴いてほしいものだ。
■『ジャイラス』バッハのトッカータとフーガ
続いては『ジャイラス』(コナミ)のメインBGMを紹介したい。こちらの原曲は、「音楽の父」とも呼ばれるJ・S・バッハ作曲の『トッカータとフーガ ニ短調 BWV565』……と言うと「知らないよ」と思われるかもしれないが、冒頭のメロディーは多くの人が知っているはず。「鼻から牛乳」と言えばピンとくるだろう。
原曲はパイプオルガンのために書かれた作品なのだが、その音色を思わせる荘厳な始まり方は『ジャイラス』でも同じだ。そのため初めて聴いたときは「忠実に再現する感じ?」と思ったのだが、イントロが終わった途端ドラムのビートが激しく刻まれ、テンポがいきなり早くなるので驚かされた。
そこからはもうThe・ロック! のサウンドが続き、そのカッコよさにテンションが上がりっぱなしだ。何がすごいかといえば、そんな風にロック調になりつつも“ちゃんとバッハ”なところだろう。原曲を活かしつつ、アレンジャーの個性も色濃く出ているように思う。
バッハはもともと“どんなジャンルとの親和性も高い”作曲家としても知られており、ロックやジャズなどさまざまなアレンジが数多く生み出されている。ファミコン音楽の可能性と同時に、バッハの音楽が時代を超えて愛され続ける理由を垣間見れるような名アレンジだった。


