
ドラマにハマる瞬間は「こういう人って実際にいそう!」と、感じたときかもしれない。熱血教師、嫌な上司、頼れる後輩……などなど、自分の周りにも存在しうる人物が登場したとき、視聴者はより一歩、作品に踏み込んでいくのではないだろうか。
現在放送中のドラマ『ディアマイベイビー〜私があなたを支配するまで〜』の、松下由樹さんがまさにそうだ。女性芸能マネージャー・吉川恵子役の松下さんは、自分の立場を利用しながら新人俳優の森山拓人(野村康太さん)に異常な愛情を注ぐ「怖い女」を演じている。
敏腕マネージャーとして活躍する反面、愛する男性に異様な執着心を向ける恵子。表の顔と裏の顔を使い分ける松下さんの怪演に戦々恐々としながらも、「こういう人って実はいそう……」と想像し、ハマっている視聴者は多いだろう。
『ディアマイベイビー』に限らず、過去にも「現実にいそうな怖い女」を演じ、話題になった女優は多い。そこで、視聴者が釘付けになった女優たちの怪演を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■可愛いのに底知れぬ恐怖を感じる女性『あなたの番です』奈緒
『あなたの番です』は、2019年4月より放送されたドラマだ。田中圭さん演じる手塚翔太と、原田知世さん演じる妻・菜奈がマンションを購入し、住民会に参加したことから交換殺人ゲームに巻き込まれていくストーリーである。
本作は謎解きがテーマになっており、物語が進むにつれ次々と明かされる事実に視聴者は釘付けになった。なかでもそのカギを握るのが、奈緒さん演じる尾野幹葉の存在である。
幹葉はおっとりとした可愛らしい女性で、登場人物の中でも癒し系キャラだった。しかしストーリーが進むにつれ、翔太にぞっこんになり、異常な執着を見せていく。
第1章で生き残った幹葉は、第2章で翔太に執拗につきまとうようになる。自分は翔太の恋人だと思い込んだり、フラれたと思って脅迫めいたことをしたりと、徐々にエスカレートしていくのだ。
なかでもインパクトが大きかったのが、手作りの飢渇丸(きかつがん)を翔太に渡すシーン。
感謝は伝えつつも「これで最後にしてほしい」とやんわり断る翔太に対し、「あたしのこと捨てるんですか」「飽きたらポイ捨てですか」と睨み、追い詰める幹葉。しかもその間ずっとエレベーターのドアにバンバンと何度も挟まりつつ、目を光らせて恨み言を吐くのだから恐ろしい。
その場を明るくさせる柔らかな笑顔が印象的だった幹葉だが、その姿はどこへやら、目を爛々とさせて翔太を脅す姿は鬼気迫るものがあった。「可愛いのにどこか恐ろしい人物像」を見事に体現した菜緒さんの演技は必見だ。
■1人の男に人生すべてを捧げた女の恐怖『ストーカー・誘う女』雛形あきこ
90年代の社会問題として取り上げられていた「ストーカー」を題材にドラマ化したのが『ストーカー・誘う女』(1997年)である。常軌を逸したストーカー女性の恐怖の行動に、視聴者は夢中になった。
本作でこのストーカー女性を演じたのが、当時、グラビアやバラエティ番組でも活躍していた雛形あきこさんだ。本作は雛形さん演じるOL・上原ミチルが、既婚者の森田柊志(陣内孝則さん)に執着し、彼やその家族をも追い詰めていく話である。
登場当初はおしとやかな美人OLという印象だったミチル。だが、柊志と関係を持ってから徐々に過激な行動に走っていく。
部屋一面に貼った柊志の写真にすり寄って泣いていたかと思いきや、柊志が自分のものにならないことに怒りをあらわにし、最終的には彼の妻を殺害する決意をする。その後、スーツ姿&パンプスを履いたまま包丁を手に森田家に侵入したミチルは柊志に襲い掛かり、彼の家族をも追い詰めるのだ。
現実において、ここまで過激な行動に出る人は滅多にいないだろう。だが、恋愛に人生のすべてを捧げてしまうと、ミチルのように暴走してしまうこともあるかもしれない。
愛情と憎悪は紙一重と言われるが、雛形さん演じるミチルには他人事とは言い切れない怖さがあった。