
漫画の実写化作品というのは、キャラクターの再現度の高さがものをいう、難しいジャンルだ。原作のストーリーを大切にしているのはもちろんのこと、キャラクターの性格や外見があまりにも原作のイメージと違うとファンはがっかりしてしまう。
とはいえ、漫画のキャラクターは外見も性格も個性的なことが多く、完璧に再現するのは至難の業。俳優たちの演技力や溶け込み方が作品を左右するといっても過言ではない。
今回は、そんな再現度が問われがちな実写化作品で、原作キャラクターそっくりの超妖艶な姿を披露した男性俳優を振り返ってみよう。
■名前の通りの美人ぶりに驚き…オダギリジョーの美女丸
まずは、小山ゆうさんの同名漫画を実写映画化した2003年公開の『あずみ』。同作は、江戸時代を舞台に、親を亡くし刺客として育てられた上戸彩さん演じるあずみの成長と戦いの日々を描くアクションだ。
原作とはやや違いがあるものの、小栗旬さん、永山瑛太さんら人気俳優が多数出演していたことや、序盤で刺客たちが殺し合いをさせられる衝撃の展開、ストーリー全体を通しての派手な殺陣が注目を集めた。
豪華キャストの中でもひときわ輝きを放っていたのが、最上美女丸を演じたオダギリジョーさん。登場は中盤以降と遅めだが、オダギリさんの存在感は作中で最も強かった。
美女丸といえば、いわゆる“オネエ言葉”を使い、美しい外見とたおやかな身のこなしで、まるで女性のような雰囲気を纏う凄腕の剣客。「受け太刀は不要」と刀につばを入れず、異様な動きの速さと独特の立ち回りで相手を追い詰める残忍な人物である。切り合いを楽しむ美女丸のキャラは、原作でも突出していた。
あまりにクセの強いキャラクターゆえ実写化は難しいだろうと思われていたが、オダギリさんは完全に美女丸とシンクロ。まず、目の周りを赤く塗りたくり、胸まである長髪をたなびかせた姿がとにかく美しい。さらに、セリフのひとつひとつも驚くほどに違和感がないのだ。
ひゅうがを一方的に追い詰めて弄び、楽しそうに命を削っていく姿は、美女丸の猟奇性を見事に表現していて実に気味が悪い。最大の見せ場であるあずみとの対決シーンもそうだ。一人で数百の敵を切り倒すあずみに大興奮する姿、あずみに首を斬られてもなお目を見開いて刀を振るう姿は漫画そのもの。「実際に美女丸がいたらこんな感じだろう」というイメージそのままだった。
ちなみにオダギリさんは、この美女丸役で日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞している。