救いなし「絶望エンド」に背筋がゾクッ…ドラマ『世にも奇妙な物語』後味が悪すぎる「ブラック回」の名作の画像
『世にも奇妙な物語』(C)フジテレビ

 1990年の放送開始以来、幅広いジャンルの短編を500本以上も生み出してきた『世にも奇妙な物語』。長年番組を見てきたファンであれば、「あの作品が忘れられない」という印象的なエピソードがあるのではないだろうか。

 中でも記憶に残るのが、ねっとりした後味の悪さが残る絶望エピソードだ。『世にも奇妙な物語』らしく、主人公が理不尽な目にあう救いのない展開には、「こんなこと本当にあったらイヤ」とゾクゾクしてしまう。

※本記事には作品の内容を含みます

■後味の悪さはダントツ?『おばあちゃん』

 たとえば“後味の悪い絶望回”といえば、祖母のお見舞いに行った12歳の中村美保(柊瑠美さん)の数奇な運命を描く、2001年『秋の特別編』で放送された『おばあちゃん』は外せない。

 病院を訪れた美保は、チューブに繋がれ寝たきり状態の祖母から「自分は明日死ぬが、弟に会いたいので“一日だけ”体を交換してほしい」とテレパシーで語りかけられる。美保は驚き、一度は断るものの祖母に同情して体を貸してしまう。

 美保の体を手に入れた祖母は、わらべうたでお手玉をして自由を満喫し、想い人・サダオに会いに行く。「弟に会う」は嘘だったのだ。

 祖母と体を交換した美保は病室で痛みに苦しむが、死が目前に迫ったときに祖母が到着。祖母は美保にお礼を言い、一日だけという約束通り肉体を戻し、そのまま亡くなった。

 ここまでであれば祖母と孫の交流を描いた物語のようであるが、このエピソードの絶望展開はここから描かれる。30年後、大人になった美保(片平なぎささん)は、母の葬儀に参列していた。そして、おもむろにお手玉を作ると例のわらべうたを歌いだし、衝撃の一言を口にする。「美保にはすまないことをした。やっぱり戻ることが出来なかった」と。

 実は祖母はあのとき、肉体を孫に返さなかったのだ。そして美保の母、つまり息子の嫁の遺影を睨みつけ、「だって不公平だろ? この女にも苦しい思いをさせななきゃ」と思いを明かす。孫の体を奪った彼女は、自分が苦しんだ延命治療を、嫁に3年間も受けさせていたのだった。

 祖母の企みは恐ろしく、善意で体を貸した美保が不憫でならない。このイヤな余韻こそが同エピソードの魅力だろう。

■こんな死に方イヤ!初期最高傑作『死ぬほど好き』

 主人公が不憫な死を遂げる作品では、デビューしたての野島伸司さんが脚本を手掛けた1990年放送の『死ぬほど好き』も恐ろしかった。

 このエピソードは、高校の同じクラスの憧れのマドンナ・美香(石田ひかりさん)を呼び出し、自分のニセの葬式を開いて彼女の思いを知ろうと企む話。

 ある日、純平と太と省吾の3人は、美香が純平を好きなのではと盛り上がる。そして葬儀社の息子・省吾が提案したのが、「純平の嘘の葬儀に美香を呼び、本音を探る」というドッキリ企画だった。

 純平は棺桶に入るが、ここで予想外の出来事が起こる。美香が周囲に話したことで担任や生徒が来てしまい、最終的には両親も帰宅し本格的な通夜が始まってしまうのだ。ただ、葬儀の中で美香の告白を聞けたので、ある意味作戦は成功したと言えるかもしれない。

 太と省吾は言い出せない罪悪感で酒を煽るが、純平は祝杯だと酒を飲み、棺桶の中でそのまま眠ってしまう。翌日、太と省吾が目を覚ますと棺桶がなく、二人は急いで火葬場に向かう。

 棺桶の中で目覚めた純平はパニックに陥るが、霊柩車の急ブレーキで頭を打って気絶してしまう。再び目覚めると、棺桶は火葬炉に入れられる直前。純平は恐怖のあまりまともに叫ぶこともできないまま火葬炉の扉は閉じられ、生きたまま火葬されてしまった。

 戸惑う太と省吾に両親は言う。「これも運命なんでしょうね。おかげで立て直せる。あの子に保険をかけていたので」と……。

 実は、両親は資金繰りに苦しんでいた。もしかすると本当は生存を知っていたのではと考えると、より恐ろしい。

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