■ド迫力の合体技も! 王道能力バトルを思わせる頭脳戦

 本家『ポケモン』の枠に収まらないトリッキーな戦闘描写も、『ポケスペ』を語るうえで外せない。ポケモンバトルの戦略というと、ポケモンが持つタイプごとの相性や攻撃と補助のバランスがよく挙げられるが、本作は漫画ならではの表現でさらに掘り下げている。

 たとえば、ほのおタイプのブーバーと戦った際、じめんタイプの技「すなかけ」でブーバーを倒す展開がある。ゲームの「すなかけ」は命中率を下げるだけで攻撃力はないのだが、本作では砂を大量にかけてブーバーの動きを封じる形で倒している。ゲームにある技が独特なアイデアで猛威を振るうのが面白い。

 ほかに印象深い頭脳戦といえば、みずタイプのニョロボンとでんきタイプのピカチュウのコンビネーションで雷雲を作りだし、くさタイプのフシギバナが「つるのムチ」で作った避雷針に雷を落とす“合体技”だろう。レッドの冒険を支えた最古参の3匹が、『赤・緑』編ラストバトルの決め手になったのがまた熱い。

 読者を納得させるケレン味の効いた理屈と、能力の強弱より機転が勝敗を分けるハラハラ感が『ポケスペ』の醍醐味といえよう。

 

 1997年から連載が開始された『ポケスペ』。本家『ポケモン』を大胆に解釈したポケモンバトルは緊張感に満ちており「ゲームでもこんなバトルをしてみたい!」と願ったユーザーは星の数ほどいる。筆者もそのひとりだ。

 トレーナーとポケモンがセットで戦う『ポケモンレジェンズZ-A』なら、憧れの“ポケスペ流バトル”を体験できるかもしれない。発売予定の2025年秋、28年越しの夢が叶うのか期待したいところだ。

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