■通信進化のために契約書を持参!?
『ポケモン 赤・緑』は、通信ケーブルを使った通信プレイを大々的にアピールしていた。ゲームバランスも通信プレイを前提に組まれていた要素がいくつかあり、その最たるものが通信交換でのみ進化するポケモンだ。
ねんりきポケモンのフーディンや、かいりきポケモンのカイリキーはレベルアップでは進化せず、進化前のユンゲラーやゴーリキーを通信交換で相手に渡すことで初めて進化する。
通信ケーブルがなければ絶対に手に入らない“通信進化ポケモン”は、当時の子どもたちの憧れであり、そのためだけにポケモン交換をしたいプレイヤーがあとを絶たなかった。
そんな通信進化だが、やりとりは少し複雑だ。ポケモンを進化させるために通信交換するのだから、進化した時点では相手のデータに送りこまれた状態になっている。もう一度交換して返してもらわないと、自分がゲットしたことにならないのだ。
そのため、通信進化は「進化させたらすぐに返す」と示し合わせてからおこなうのが当たり前だった。約束を破ってポケモンを返さないズルい奴もいたので、友達同士でも若干緊張したことをよく覚えている。
筆者の友達には「フーディンに進化させたら必ず返すことを誓います」と書かれた手作りの契約書を用意する強者もいた。子どもに契約の大切さを教えるために通信進化を実装した……というのはさすがに考えすぎだろうか。
有線でゲーム機同士を繋げる通信ケーブルは、現代から見れば旧時代のおもちゃかもしれない。だが、当時は間違いなく革命的な代物であり、通信ケーブルがあったからこそ『ポケモン赤・緑』にハマった人もいただろう。
今では常識となったマルチプレイの礎にもなった通信ケーブル。覚えている人は『ポケモン赤・緑』発売から29年が経った今日ぐらいは、遠い日の思い出と“通信”してみてはいかがだろうか。