■やっぱり人間は自分第一「三人死ぬ」
最後は1991年に放送された「三人死ぬ」。ワイドショーでコメンテーターをしていた弁護士の主人公(露口茂さん)が、番組内で刑法の「緊急避難」について「私だったら、自分の命を守るために他人を犠牲にするより、自分の命を犠牲にする」と堂々と語っていたところから物語が始まる。
その後、主人公は4年前にタイムスリップし、犯人が3人の人質を猟銃で射殺した銀行での人質事件に巻き込まれる。この事件では3人が亡くなったと知ってはいたものの、事件の資料はタクシーの中。犯人が翌朝に突入した警官隊によって射殺されることを知っている主人公は、心のうちで早く人質の中から3人が死んでくれないかと願ってしまう。
2人の人質が殺され、ついに死ぬ予定はあと1人。そんな中、人質が逃げ出そうとしていたのを見た主人公は、自分が助かるために犯人に「逃げるぞ!」と伝え、犯人は逃げようとしていた男性を射殺するのだった。
そして朝になり、犯人は警官隊に射殺される。主人公は安心して立ち上がるも、犯人の持っていた猟銃の弾によって即死してしまった。モノクロの視界の中、主人公は事件の資料に書かれていた内容を思い出す。この事件では3人が死亡、1人が重傷(逃げようとした男性)で、死者の内ひとりは身元不明だったことを……。
非難していた「緊急避難」を我が身かわいさの言い訳に使い、自分が助かるために他人を犠牲にしようとした主人公。主人公の顔は散弾でわからなくなってしまったが、他の人質たちも告げ口をした主人公のためのモンタージュ写真作成には協力してくれなかったという皮肉な話だ。
とはいえ、実際に自分が同じ立場になったら主人公のようには行動しないとも言い切れないのが実際だろう。
『世にも奇妙な物語』では時に人間の欲や愚かさが描く。どれも決して他人事ではないと肝に銘じなければならないエピソードばかりだ。