今から約25年も前、1999年からTBS系で放送されていた連続テレビドラマ『ケイゾク』。7話までの一話完結型刑事ドラマから一転、後半は霊能力というオカルト色全開の連続ミステリーに突入していく斬新な展開は、視聴者の目を釘付けにした。
中谷美紀さん演じる主人公・柴田純が研修として配属された捜査一課弐係は、迷宮入り事件を“継続”捜査する部署である。持ち込まれるのは、毎回そこはかとない気味悪さをまとった難事件ばかり。柴田は同僚である刑事・真山徹(渡部篤郎さん)とそれらの事件を解決していくことになるのだが、中にはなんとも言えない後味の悪さが残る事件も存在した。今回はそんなエピソードを振り返ってみよう。
■ツッコミどころも多い?「盗聴された殺人」
まずは、第3話「盗聴された殺人」を見ていきたい。依頼主は、「ブティック強盗殺人事件」で1000万円と夫の命を奪われた妻・竹下美奈子(松田美由紀さん)だ。
弐係を訪れ、夫の愛人・森川裕子が犯人だと告発する美奈子。いわく、彼女が電話で仲間と夫殺害についての話をしているのを聞いたのだそう。さらに、木曜の23時に金を渡すと言っていたと訴え、当日裕子の部屋に盗聴器を仕掛けるよう頼んだ。それを受け、弐係は盗聴捜査に乗り出す。
当日、怪しげな男が現れ、少しすると裕子の部屋から叫び声が聞こえてくる。真山はその男・成田を確保するも、裕子はすでに殺害されていた。だが成田は“部屋はもぬけの殻だった”と困惑している様子。そして柴田は、叫び声のテープと外廊下のシミから美奈子が真犯人だと突き止めた。
今回のトリックはこうだ。まず、美奈子は盗聴器を隣の空き部屋に移し、裕子の部屋で彼女を殺害。あらかじめ用意しておいた廊下の壁を動かして空き部屋を裕子の部屋に見せかけ、成田を呼びだす。その後、壁と盗聴器を戻して自ら叫び、弐係を呼んで成田に罪を被せたのである。
柴田の追及で自白した美奈子は、幼い息子の目の前で逮捕されることとなる。その直前、真山に促された息子に「ママは人を殺したの?違うよね?」と問われ、「子どもに何か言ったの?あなた達に何が分かるの!」と真山に掴みかかる美奈子。真山はそんな彼女に「教えてやれよ。パパを殺した犯人をママが殺しましたと、立派なことをやりましたと」と言い放つ。
美奈子は「後悔なんかしてないから」と言い残し、「ママ!」と叫ぶ息子に笑顔を見せてから連行されていく。父は殺され母は逮捕され、小学生を目前に一人ぼっちになった息子の今後を思うとなんとも切ないラストであった。
■壺坂刑事の名シーンも…「史上最悪の爆弾魔」
続いては、真山の元指導役である警部補・壺坂邦男(泉谷しげるさん)が中心となった第6話「史上最悪の爆弾魔」。定年が迫ったある日、壺坂は間もなく時効となる「小包爆弾事件」を解決したいと弐係を訪れた。
同事件は、中学教師・森田功作あてに卒業生の白砂竜太から肉を装った小包爆弾が届き、爆破による死者が出たというもの。しかも被害者は、たまたま小包を森田から譲り受けた事務員・赤羽さくらの婚約者である富川桂一だった。ただ、白砂にはアリバイがあり、爆弾を作れるであろう化学教師・河合秀樹も新任のため無関係とされていた。
柴田は、森田を殺せていないのに次の犯行がないという違和感を指摘。壺坂が長年気にかけていたさくらを訪ねて軽い聴取を行い、やがて彼女が真犯人だと見抜く。
時効当日、真山はさくらに「犯人は爆弾を作った奴と送った奴の2人いる。作った奴は海外にいたので時効が伸び、今日時効になるのは送った奴だけ。“作った奴のことを全て話すと共犯者から連絡があった”と作った奴にカマをかけたから、時効までに動きがあるはず」と告げた。これは、さくらへのカマである。
次に柴田が、河合がここに来るとカマをかけた。その後、時効直前にういろうの小包が届くと、さくらは「それ爆弾よ!河合が私を殺すつもりなのよ!」とパニックを起こし、自分こそが爆弾を送った人物で河合が作った人物だと自白してしまう。“犯人をハメて自白させる”というこの展開は、ミステリーらしくスリリングだった。
犯行の動機は、桂一の裏切りだった。当時桂一の子を妊娠していたさくらは、彼の願いで中絶を選んでいた。桂一は弁護士を目指す苦学生で、ふたりに子どもを育てられるほどの経済的余裕はなかったため、さくらもそれに納得していた。
だが病院の帰り、彼女は桂一に内縁の妻と子がいたことを知ってしまう。しかも、妻は彼女が中絶した日に出産していたのだ。この事実はあまりに残酷で、さくらに同情してしまうレベルである。
壺坂は解決後、真相にはうすうす気付いていたがさくらを信じたかったと柴田にこぼし、定年を迎えた。署を去る壺坂に警察官が総出で敬礼し、真山も笑顔を見せたラストは感動の名シーンだ。