■手の込んだトリックに感心「死を呼ぶ呪いの油絵」
最後は、7話「死を呼ぶ呪いの油絵」を振り返る。依頼主は、画廊経営者・山田菜穂子(髙田万由子さん)で、6年前に父・山田重雄が殺害された事件に関する謎を暴いてほしいという話だった。
何でも、画廊には絵柄の変化を見た者が死ぬ呪いの絵があり、重雄もこの絵を見たのだとか。最近絵柄が変わったと従業員の藤田滋が発言し、菜穂子は再び悲劇が起こるのではと相談に来たのである。
呪いの絵は、死んだ子どもが石を積み上げる「賽の河原」を描いたものだった。柴田らが絵を確認し画廊を出ようとしたその時、菜穂子の伯父・平良文弘が「絵が変わってる」「殺される」と叫び出て行ってしまう。すぐに柴田が確認してみると、絵からは本当に子どもが消えていた。
その後19時、文弘から画廊に「助けてくれ」「工事現場がすぐそばに」「海の近く」などと電話が入り、彼は海沿いの倉庫近くで溺死体となって発見される。柴田は、自身の水筒と菜穂子の水筒が同じだったこと、中身が変わっていたことで菜穂子が真犯人だと気づく。
柴田の推理で判明したのは、文弘は目隠しをされていて音は菜穂子が聞かせたテープであること、溺死の原因は彼女の水筒に入っていた海水であること、文弘を探すフリをして死体を海に運んだということだった。ちなみに、洗面器一杯分の海水があれば人は溺死するらしい。
絵のトリックは、柴田らには子どもがいる絵を、文弘には子どもがいない絵をオリジナルと認識させておき入れ替えるというもの。文弘が出ていった時に替えていたわけだ。
幼少期から絵を愛していた菜穂子にとって、絵を金儲けの道具にする父と伯父は悪だった。芸術への愛が大きく歪み、彼女は父と伯父を殺すに至ったのである。さらに最後には、「このままじゃいけないの。本当に美しいものを愛する人たちからどんどん芸術が遠ざかっていく。そう、私たち(ブローカー)がいるかぎり」と言い、毒薬を飲んで自身の命も絶ってしまった。
自身の信念のために手を汚し、最後には自分をも葬り去った殺人鬼。他に方法はなかったのかとやるせなく思ってしまう、悲しく虚しいエピソードだった。
今回紹介したエピソードはいずれも後味の悪さが際立つ一方で、良質なミステリーに仕上がっている。未視聴という人は、ぜひ一度チェックしてみてはいかがだろうか。