RPG作品には欠かせない数々の凶悪な“ボスキャラ”たち。プレイヤーを恐怖のどん底に陥れる凶悪なキャラクターもいるが、彼らのなかには強い“勝負愛”から、意外な形でこちらを有利にしてくれる希有なキャラクターも登場する。
今回は、勝負愛ゆえに思いがけない優しさを披露した、愛すべきボスキャラたちを見ていこう。
■ゴルベーザ四天王随一の人格者…『ファイナルファンタジーIV』ルビカンテ
今もなお続編が展開され続けている名作RPG『ファイナルファンタジー』シリーズ。1991年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)から発売された『ファイナルファンタジーIV』のなかに、“勝負愛”に満ち満ちた男気溢れるボスキャラが登場している。
主人公・セシルたちの前に立ちはだかる強敵・ゴルベーザ四天王。そのうちの一人であるルビカンテは、“火のルビカンテ”の通称が指し示す通り、強力な炎の使い手である。見た目も赤のターバンとマントという、紅蓮に染め上げられた姿が特徴的だ。
勝つために手段を選ばない悪役然としたほかの四天王メンバーだが、ルビカンテは正々堂々を重んじる武人肌とした性格をしている。
たとえば、仲間の一人・エッジを打ち負かしたにもかかわらず、彼がさらに力をつけて戻ってくることを期待してとどめを刺さなかったり、エッジの両親を怪物に変えた部下・ルゲイエの非道を詫びたりと、随所で人格者としての一面が見られるのだ。
そんな彼の“勝負”へのこだわりが溢れ出た場面と言えば、バブイルの塔での激突時だろう。
これまでの因縁に決着をつけるべく、潜在能力を覚醒したエッジとセシルらのパーティを相手取るルビカンテだが、全身全霊で勝負をするため「さあ、回復してやろう!」と、なんとこちらのHP・MPを全回復してくれるのである。
その立ち振る舞いもさることながら、四天王のリーダー格としての実力は本物。数々の強烈な炎属性の攻撃を操り、なかでも得意技である「かえんりゅう」は即死級のダメージをばらまいてくる。
当然、彼に炎は効かず吸収されてしまうのだが、なんとその代わりと言わんばかりに蘇生魔法・レイズをかけてくれたりと、徹底的に“フェア”な戦いを重んじる。その姿勢には敵ながら感服してしまう。
■わざわざフルメンバーを揃えてくれる優しさ…『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』イブール
11月14日に発売となるHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が話題を呼ぶ『ドラクエ』シリーズ。
前述の『FF』シリーズとは双璧を成す名作揃いだが、なかでも1992年に発売された『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(エニックス 現:スクウェア・エニックス)には、思いがけない方法でプレイヤーを有利にしてくれるボスキャラが登場している。
それが、物語の“青年期”に登場する「光の教団」の教祖・イブールだ。
ワニと人を掛け合わせたような見た目のイブールは、“世界平和”を謳う教団を隠れみのに、人々を奴隷として労働させたり、石化した主人公の妻を教団のシンボルとして扱ったりと、非道の限りを尽くしていた。
そんなイブールは、妻を救い出すべく大神殿へと駆け付けた主人公らの前にボスとして立ちはだかる。「かがやくいき」や「イオナズン」、「痛恨の一撃」といった強烈な攻撃技はもちろんのこと、「マホカンタ」による防御や「いてつくはどう」での強化解除と、攻防共に隙のない立ち振る舞いに苦戦したプレイヤーは多いだろう。
まさに物語を代表する悪役だが、実はイブールは戦闘前、意外な方法で主人公側を有利にしてくれる。
彼と激突する大神殿は“馬車”を乗り入れることができないのだが、なんとボス戦に入る際、わざわざ馬車のメンバーを呼び寄せ、万全の態勢で戦いに挑ませてくれるのだ。これまで悪行三昧だった彼が見せるささやかな優しさに、驚いてしまったプレイヤーも少なくはないだろう。