■キャラが濃い探偵がハマり役だった『美食探偵 明智五郎』
ヒットメーカーである東村アキコさん原作の漫画『美食探偵 明智五郎』を実写化したドラマ(2020年)では、中村さんは主人公の明智五郎を演じた。
タイトル通り、探偵を生業とする明智は超が付くほどの美食家だ。現代にはそぐわない古風なファッションに身を包み、さまざまな事件を解決に導いていく。ジャンル的にはサスペンスだが、ドラマでは全体を通してコメディタッチのため、シリアスな場面との急激な落差も楽しめてファン人気も高い作品である。
クールな明智を演じる中村さんの演技はキャラクターの雰囲気にどハマりしており、ヒロインの小林苺を演じる小芝風花さんとの息の合ったコンビネーションと、小池栄子さんが演じるマリアとの三角関係からも目が離せない。
明智を演じるにあたって中村さんは「明智はあの顔面なのになぜ僕のところに話が来たのかな?」と、インタビューでおどけてみせる場面も。だが、荻野哲弘プロデューサーは、“現場で中村さんと意見を交わしながら創る箇所もあり、その部分の反響も大きく、彼の凄さをあらためて感じている”と、賞賛の言葉を贈っていた。
■癒やし系キャラかと思いきや…『珈琲いかがでしょう』
前述した『凪のお暇』の作者・コナリミサトさんの漫画『珈琲いかがでしょう』(2021年)の実写化ドラマでも、中村さんは主演に抜擢されている。
本作はさまざまな悩みを抱える人々がほっと一息つくことができる癒しの移動珈琲店「たこ珈琲」を舞台に、人間ドラマを描いた作品だ。中村さんが演じたのは、この「たこ珈琲」の店主である青山一である。
実写化される以前から青山のビジュアルや仕草などが「中村さんに似ている」という声が殺到しており、そんなファンの熱望を受けてのキャスティングとなったようだ。
中村さん自身もインタビューで「お待たせしました」とコメントしていたが、作者のコナリさんも「似ているという声をいただけて光栄だった」と明かしていた。
ただの癒やし系キャラかと思いきや、実はそうではない青山の隠された過去までも丁寧に演じる中村さんの演技力に見入ってしまう作品だ。
魅力的な演技と飾らない人柄でファンの心をつかんで離さない中村倫也さん。漫画実写化作品でも彼の存在感は大きく、『珈琲いかがでしょう』のように実写化前から中村さんをキャラクターに重ねて見てしまう人がいるのにも納得だ。
これからもさまざまな作品に出演し、ファンを楽しませてくれることだろう。今後も注目していきたい俳優である。