■せっかく育てたのに「預けたアイツが帰ってこない…」
続いては、キャラクターにまつわる絶望的な瞬間だ。
船を入手した後、プレイヤーは世界各地を巡り、魔王バラモスの城に乗り込むために6つのオーブを集める旅に出ることに。そのうちの1つであるイエローオーブを手に入れるため、スーの東にいる老人の頼みで商人を預けることになる。
預けた商人のおかげで町は急速に発展し、ついにイエローオーブを手に入れることができた……と思ったら、なぜか預けた商人は帰ってこないのだ。
長い時間をかけて育てた商人が戻らないことに、多くのプレイヤーは絶望を感じたことだろう。
実はこの事態について、『ドラクエ』の生みの親である堀井雄二氏は、関連書籍『ドラゴンクエストIII そして伝説へ… 知られざる伝説』で、本来は冒険の先でレベルが上がった商人がパーティに戻ってくるようにしたかったが、容量の関係で実現できなかったと語っている。
後のリメイク作品では、商人が戻ってくるようになっているため、おそらくHD-2D版でもその点は心配ないはず。しかし、ファミコン版で商人を手塩にかけて育成したプレイヤーは、せっかく育てた商人が永久追放されるという憂き目にあった。
そのほかにも、「どくけしそう」も「キアリー」もない中で出会う序盤のバブルスライム集団や、祈るように「にげる」を選択した結果出てくる「しかし まわりこまれてしまった!」の文字なども、まさに「絶望の瞬間」だった。
このような体験も含め、ファミコン版『ドラクエ3』は多くのプレイヤーにとって忘れられない思い出となっている。
以上、いくつかの絶望シーンを振り返ったが、プレイヤーが苦戦しているときにこそ、真の楽しみや達成感が生まれることを教えてくれるということを『ドラクエ3』は教えてくれたのではないだろうか。HD-2D版ではどうなっているのか、待ち遠しい。