近年放送されているテレビドラマは、医療系や刑事ものはもちろん、推し活や家族愛など、実に多種多様なテーマがある。
しかし今から約30年以上前のバブル期は違った。ドラマや映画といえば男女の恋愛をテーマにした作品が多く、なかでも80年代後半から90年代初頭にトレンディーな作風で人気を集めたのが「ホイチョイ・プロダクションズ」による恋愛映画『私をスキーに連れてって』、『彼女が水着にきがえたら』、『波の数だけ抱きしめて』の映画三部作だ。
今回は日本にスキーやマリンスポーツブームを巻き起こした、ホイチョイ・ムービー三部作について振り返りたい。
■小物の演出もこだわり空前のスキーブーム『私をスキーに連れてって』
『私をスキーに連れてって』は、1987年11月に公開されたラブコメディ映画だ。
大まかなあらすじはこうだ。三上博史さん演じるサラリーマンの矢野文男は、スキーの腕前はあるが、奥手で彼女のいない冴えない男性。しかしゲレンデで原田知世さん演じる池上優と出会い、一目惚れをしてしまう。その後、多くのトラブルが襲い掛かるなか、恋に仕事にと奮闘する矢野の姿が描かれる。
ホイチョイ三部作はいずれも、今ではベテランになった俳優たちの貴重な若手時代の姿が楽しめる作品で、『私をスキーに連れてって』は、白いスキーウェアに身を包んだ原田さんがとにかく可愛い。またバブル期に人気だった車種、トヨタのセリカが登場していたり、スキー用品はオシャレなSALLOTのオリジナルブランドだったりと、小物の演出にもこだわっている。
2人が出会うシーンは、優が指ピストルで「バン!」と矢野を狙うと、矢野が転倒するという有名なシーンから始まる。その後もうっかり雪に埋もれた優を偶然矢野が助けるなど、まさに少女漫画のようなラブコメ展開が続くのもホイチョイ作品の魅力だった。
松任谷由実さんの『恋人がサンタクロース』や『BLIZZARD』といった名曲とともに描かれるこの映画は、当時、空前のスキーブームを巻き起こした。スキー場に行けば本当に矢野と優のような恋愛ができるのでは……と、憧れを持つ人が多かったのである。
■80年代恋愛あるあるシーンが満載『彼女が水着にきがえたら』
『彼女が水着にきがえたら』は、1989年の6月に公開された映画だ。前作とは変わり、本作はマリンスポーツが好きなOLと、恋愛にちょっと不器用なヨットマンとの恋と冒険を描く物語である。
22歳のOL・田中真理子は、スキューバーダイビング中に宝石を積んだ飛行機・ドラゴンレディ号を発見する。その宝を探していた織田裕二さん演じるヨットマンの吉岡文男と出会って恋に落ちるも、宝を巡って第三者から狙われるというドタバタラブコメディだ。
1作目に続き、ヒロインを演じたのが原田さんだ。ビーチシーンで魅了し、相手役の織田さんもまだ若くあどけなさが光る演技を見せてくれる。お互い両想いなのにちょっと意地悪なセリフを言ったりしてなかなかくっつかないのは、ホイチョイ・ムービーをはじめとしたバブル期恋愛ドラマの“あるある”だろう。
本作は主役の2人以外はもちろん、伊藤かずえさんや竹内力さん、田中美佐子さんなど80年代に人気を博した俳優が脇を固めており、非常に豪華なキャスティングだった。スキーブームを巻き起こした『私をスキーに連れてって』と同じく、こちらも日本にダイビングブームを巻き起こした作品だ。