■江戸の町をチャリで駆け巡る『仮面ライダーW』

 最後は、平成仮面ライダーシリーズ第11作目『仮面ライダーW』から。「謎回」となったのは、29話「悪夢なH/眠り姫のユウウツ」と第30話「悪夢なH/王子様は誰だ?」だ。

 風都大学赤城脳科学研究室の研究生たちが、夢のなかで次々と怪物に捕まり、眠りから覚めなくなるという事件が発生する。

 研究生の一人である雪村姫香の依頼を受けた鳴海探偵事務所のメンバーが事件を解決するという大筋は、探偵モノである本作らしい展開だ。しかし、その犯人であるナイトメア・ドーパントが、夢と現実の世界を自在に行き来する能力を持っていたため、このエピソードでは少し変わったシーンの連続となってしまう。

 まず、風都大学での聞き込み中、夢のなかで実行したい作戦があると翔太郎の枕を持ってきたフィリップ。もっといい場所はなかったのだろうか……なぜか2人は大学のグラウンドの真ん中で眠り始める(案の定、このあと眠っている間に敵の攻撃を受けてしまう)。

 そして夢のなかでは、ちょんまげ姿の“岡っ引き”となった翔太郎とフィリップが登場。シリアスキャラである照井竜も奉行所の“同心”姿となっていた。さらには、ナイトメア・ドーパントとの攻防ではダブルが江戸時代のような町をバイクで疾走し、さらには自転車にも乗るなどシュールな姿を見せる。

 極め付けは、亜樹子の夢のなかの話だ。彼女の願望だったのだろうか……“なにわの美少女仮面・ダブル”に変身するなど、なかなかツッコミどころの多いシーンの連続となっていた。

 

 ちなみに、今回紹介した『仮面ライダーカブト』と『仮面ライダー剣』の回は、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のメインライターを務めた井上敏樹さんが、『仮面ライダーW』のほうは『仮面ライダーガッチャード』のメインライターを務めている長谷川圭一さんがそれぞれ脚本を書いており、最近の作品からもその作風が伝わってきて楽しい。

 また、今回紹介したエピソードは、くしくも29話と30話に集中していた。大半の作品ではこれ以降、終盤のシリアス展開に突入していくタイミングだ。もしかすると、視聴者側にも製作側にも、仕切り直し的な意味合いがあるエピソードだったのかもしれない。そう思うと「謎回」もまた違った楽しみ方ができるのではないだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3