1992年に『なかよし』(講談社)で連載を開始した武内直子氏の『美少女戦士セーラームーン』は、その凄まじい人気から社会現象まで巻き起こしたほどの名作だ。この大ヒットを受け、本作品をモチーフにしたスーパーファミコンソフトも登場したが、その意外な方向性に驚かされたファンも多くいたようだ。初のゲーム化となったスーパーファミコンソフト『美少女戦士セーラームーン』の魅力について、今回は深掘りしていこう。
■まさかのジャンル…!? スーパーファミコン版『美少女戦士セーラームーン』
1990年にスーパーファミコンが登場し名作ゲームが世に放たれるなか、漫画やアニメを題材としたソフトも数多く発売された。そのなかで『美少女戦士セーラームーン』は、1993年にゲーム制作会社・エンジェル(現:メガハウス)によってゲーム化されている。
プレイヤーは主人公・セーラームーンこと月野うさぎはもちろん、仲間として活躍する5人のセーラー戦士たちを操作していく。また、タキシード仮面やちびうさ、猫のルナ、アルテミスといったお馴染みのキャラクターたちも、セーラー戦士らをサポートする味方キャラクターとして登場している。
原作どおり、セーラー戦士たちが身につけた能力を駆使してさまざまな敵と戦いを繰り広げていくのだが、実は本作、群がってくる敵キャラを倒しながら、ステージを横へ横へと進んでいく「ベルトスクロールアクション」というジャンルを採用している。
高い等身で描かれたキャラクターたちが襲い来る敵をなぎ倒しながら進んでいく仕様は、原作が女児向け作品であるということを忘れるくらいの本格的な「アクションゲーム」となっており、驚いたファンも少なくないだろう。
初のゲーム化でまさかのジャンル選定!?……と思いきや、本作は決して“クソゲー”の類ではなく、絶妙に調整されたバランスと原作再現の数々で、プレイヤーたちを強く惹きつけた一作なのだ。
■“変わり種”と侮れない絶妙のゲームバランス!
セーラー戦士たちが群がる敵たちとバリバリの格闘戦を繰り広げる……と聞くと、どこかシュールな“変わり種”と思われるかもしれない。
しかしながら、本作はその絶妙なゲームバランスから、ハードなゲーマーはもちろんのこと、アクションがちょっと苦手という人でも楽しく遊べる工夫が随所に見受けられる。
操作する5人のセーラー戦士たちはそれぞれきちんと個性分けがされているのみならず、性能差が極端に開かないよう調整されており、どのキャラクターを使っても同様の難易度を体感できるようになっているのだ。
ゲーム自体の難易度も、簡単すぎず、難しすぎず……といったところで、老若男女問わず楽しめる良い塩梅となっている。直感的に遊ぶだけでも十分楽しめるが、ポジション取りや敵の弱点をつくことで撃破が容易になるなど、プレイヤーが上達を実感できる“隙”が組み込まれており、自然と何度もプレイしたくなる。
また、本作は小さな子どもがプレイすることも想定されているのか、ミスやコンティニューをしてもその場で“即復活”できるなど、冒頭からの“やり直し”がない点も特徴だろう。これは純粋に、アクションが苦手な人にとっても嬉しい点ではないだろうか。
残機も比較的増やしやすい設計となっており、余裕を持ったプレイができる点もプレイヤーのストレス軽減に一役買っている。原作の知名度を差し引いたとしても、純粋に「ベルトスクロールアクション」として、高水準のゲームバランスを誇っている作品なのだ。