4月12日に初回が放送された、注目の春アニメ『【推しの子】』。赤坂アカ(『かぐや様は告らせたい』)×横槍メンゴ(『クズの本懐』)という豪華タッグによる原作漫画は、2020年より「週刊ヤングジャンプ」にて連載中。推しのアイドルの息子に転生した主人公が、復讐のために芸能界を生き抜いていく、スリリングな物語だ。今回は転生前の主人公=ゴロー役の伊東健人、転生後の主人公=アクアの幼少期を演じた内山夕実、そして成長したアクア役の大塚剛央の鼎談を敢行。1人の人物を演じ継いだ3人に、その想いを聞いた。
■役のバトンを受け継いでしっかりと渡さねば
――皆さんはある意味、3人で1人の人物を演じられたわけですが、アフレコではお互いのお芝居を意識されたりはしましたか。
伊東 ゴローは一番手だったので、そういったことは何も考えてなかったですね。成長した後のアクアとゴローって、記憶を受け継ぎながらも結構性格が変わっているので。きっと今のアクアは、涙を流しながら床に頭を打ち付けたりはしないじゃないですか(笑)。
――その行動は、推しのアイドル・アイ(CV.高橋李依)の妊娠を知ったときのゴローですね(笑)。田舎の産婦人科医であるゴローの元に彼女が患者としてやってきて、アクアと双子の妹が生まれます。
大塚 アクアって難しくて、ゴローの人格が強く出るときと、アクアの人格が強く出るときがあるんです。ゴローの人格が強く出るときというのは、高校生のアクアらしからぬ、当時のゴローの年齢を感じさせるような言動のとき(笑)。そういうときは、ゴローのニュアンスがちょっと出たらいいなと考えて演じてますね。
内山 私は幼少期のアクア役だったので、そのお芝居の間をグラデーションでお届けしなければ、というプレッシャーがすごかったです。伊東さんからのバトンを受け継いで、しっかりと大塚さんに渡さねばと、身が引き締まる想いでアフレコに臨んでいました。
――では、その後の展開などを意識してお芝居されたりは?
内山 私、まだ2巻以降を読んでないんです。自分が出演した1巻までしか読んでなくて、その後はもうアニメで知っていこう!と決めていて。
一同 うわー!!
――あの物語をこれから新鮮に味わえることが羨ましいです!
内山 皆さん、そうおっしゃいますね(笑)。
伊東 3ヵ月後くらいにぜひ感想をお聞きしたいです(笑)。
■映像と感情のテンポが違う芝居の難しさ
――お互いのパートをご覧になったときの感想はいかがでしたか。
伊東 全部良かったです。実は、僕が幼少期のアクアのナレーションを担当する可能性もあったので、僕も練習はしていたんですよ。
内山 そこは本当にギリギリまで、スタッフの皆さんが吟味されていたみたいで。
伊東 ナレーションはゴローの声でも成立するじゃないですか。
――脳内の声は転生前のままで、実際に発する声は転生後の声で、というのもありえますね。
内山 だからアクアのナレーションは、“ゴローとして”言うように意識してくださいと言われたんです。子どもらしく喋っているアクアと、事情を知っている人と話すときのアクアと、モノローグと、ナレーション。それぞれしっかり分けて演じてほしいというオーダーだったので、そこはちょっと苦労しました。
伊東 不思議な体験でしたよ。絵や音が完成したものを観たとき、「こっちのほうが絶対にいい!」と思ったのと同時に、「自分はこう考えてたけど、内山さんはこういうニュアンスを出されたんだな」と。
内山 そう聞くと、今になって緊張してきました(笑)。アフレコ前にすり合わせたかった!
伊東 例えば、第1話ラストでアクアが「おそらく犯人に情報を提供していたのは自分たちの父親で、芸能界にいる人物だ」と気付くナレーションのタイミング、難しくなかったですか?
内山 そう! あのナレーション、すっごく速いんですよね!
伊東 自分の感情より若干早いからテンポアップしないといけなくて、そのためには気持ちを焦らせないといけなくて。
内山 だけどもう絶望しちゃってるのであまり熱くもなれなくて、そこがすごくせめぎ合って難しかったです。まくし立てているように聞こえないだろうか、とか。でも結果的に、あの間尺だったからこその絶望感や怒りや憎しみが表現されていて、よりリアルさを感じさせていたので、これはすごいなと思いました。
■衝撃が走るのではなく、静かに合点して決意する
大塚 第1話の前半で、ゴローとアイが病院の屋上で話すシーンがあるじゃないですか。あのシーンも感情の動きが激しいと思うんですが、掛け合いで演じられてみてどうでした?
伊東 あのシーンで、ゴローは「産ませる」という気持ちに100パーセント切り替わったんですよね。どうしても“アイドルが16歳で妊娠した”ことがフォーカスされがちですが、そもそも16歳で双子を身ごもっていて妊娠20週というのは、医者として軽い気持ちでは診れない患者じゃないですか。そこからアイと話して「僕はどうしようもないほど、君のファンだ」と産ませる決意をするわけですが、原作では“奴隷”と書かれているんです。
――“奴隷”という単語に“ファン”とルビが振ってあるんですよね。
伊東 つまりアイの持ついろんなものに服従する、隷属する、と決意するシーン。それは彼女のカリスマ性なのか、覚悟なのか、ミステリアスさなのかはわからないけれど、会話をしていく中で自然とそうなっていくので、僕も演じていて不思議な感覚でした。アイが何かひとつドカンと来る言葉を言ってゴローに衝撃が走った、とかではなくて、アイの言葉を聞いているうちに静かに合点して、静かに奴隷になることを決めている。きっとあのシーンは、アクアに生まれ変わった後も忘れないだろうし、心の拠り所になるシーンだと思うんです。剛央くんがあのシーンを忘れることはきっとないと思いますが、アクアの起点になるのはあのシーンなのかなと思ってますね。