■『8時だョ!全員集合!』で培われたセンス

 伊藤潤二はホラー作品の名手として知られるが、もう一つの特色は、ナンセンスなギャグ。「伊藤潤二『マニアック』」でもその黒いギャグや、笑いのつるべ打ちが圧巻だが、どこまで意識的に描かれているのか。

「お笑いが好きなので、ネーム(漫画の絵コンテ)から、いきなり面白いセリフを思いついてしまうんです。お話はホラーですが、そこにギャグを入れなきゃもったいないと思ってしまう(笑)。そこは意識的です。ただ、自分ではギャグだと思っていない部分で、読者の方が笑ってくれてるときもあって。そのズレも含めて、反響を読者の方にいただくときはすごく面白いですね」

 そのギャグ要素のルーツを幼少期に観たアニメ『トムとジェリー』、そして赤塚不二夫の『天才バカボン』、さらに意外にもドリフターズだと話す伊藤

「子供の頃はとくにドリフが好きで、土曜日になると『8時だョ!全員集合!』が生放送でやっていまして、それはほぼ全て観てましたね。その後に『オレたちひょうきん族』が始まって、これも高校時代ぐらいにずっと観てました」

 そして、何より幼少の頃から多くの映画を観てきたという伊藤。その出発点は『エクソシスト』などのホラー映画や『ゴジラ』などの特撮映画だとか。さらに『ゴジラ』の制作に影響を与えたと言われる、『恐竜100万年』などで知られる特撮映画の祖・レイ・ハリーハウゼンも好きだったという。

「田舎に住んでいたので、映画館では滅多に観れず、もっぱらテレビでした。主にハリーハウゼンの映画は深夜に放送されていて、あのストップモーション映画独特のカクカクした感じは深夜に観ると怖かったです(笑)。恐竜や怪獣が出てきても、日本の『ゴジラ』と違って、中に人間が入っていませんし、デザインもすごく奇抜で、 それがまた不思議なリアリティがあったんです」

 そんな伊藤氏からは、最近の映画についての話題も。

「インド映画は昔から好きだったんですが、『RRR』は約3時間を全然飽きずに楽しめました。昨年は『NOPE/ノープ』も良かったです。あの不条理感が良かったし、私自身UFOが大好きなので、UFOが雲の中に隠れている設定が魅惑的で、最後のほうの展開にも驚きました」

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