ホラー漫画の鬼才・伊藤潤二の原作をもとに、1月からNetflixシリーズのアニメ「伊藤潤二『マニアック』」が現在好評配信中。今回は、長年のキャリアの中でも尽きないその創作の源泉や、漫画を描く喜び、知られざる日常に迫る。
■人気なんて水ものだと思っている
「漫画のアカデミー賞」と称されるアメリカのアイズナー賞を4度受賞し、今年ヨーロッパ最大のバンドデシネの祭典・第50回アングレーム国際漫画祭で、特別栄誉賞を受賞した伊藤潤二氏。「伊藤潤二『マニアック』」への想いをお聞きした前回に続いて、今回は創作の秘密をお聞きしていこうと思う。まず、その独創性ある作品のテーマは、どのように思い浮かぶものなのだろう。
「日常生活の中でいろんな会話を聞いたり、小説を読んだり、あるいは、ラジオで聞いた話をちょっとひねってみたりすることが多いですね。それをノートにネタとして書き留めておくところから始めています。メモに書かれたのは結構前だけれども、それがようやく作品になるというパターンが最近はもっぱら多いです。けれど、ノートの中身もあまり古くなると、やっぱり使えなくなる。賞味期限の悩ましさはありますね」
そこから生まれる作品は、国内外の漫画家、クリエイターのフォロワーも多数。たとえば、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』などのギレルモ・デル・トロ監督や、『チェンソーマン』の藤本タツキ氏など。近年はその仕事ぶりが『浦沢直樹の漫勉』(NHK、Eテレ)でも取り上げられ、反響を呼んだ。
「自分としては、納得できる仕事をしてきたつもりなので、それが評価していただけているのかなとは思います。ただ、昨今は反響がこれほどあるとは思ってなかったということもあり、ちょっと夢のような感じというか、戸惑いもあります(笑)。しかし、人気というのは水ものだなと、調子に乗らないように自戒の念をいつも持っています」