■ユーモラスな会話劇を楽しそうに演じる役者陣

「『僕』はめちゃくちゃ内向的な人なんですよね。等身大の男の子より、すごく内向的。桜良と二人で同じ部屋に泊まるシーンが、ああいうニュアンスになるのは、彼の臆病さゆえでもあると思うんです。その臆病な部分が、桜良と会えたことによって、勇気に変わっていく。その過程を描けたらいいな、と。彼が最初の一歩をどう踏み出すのか。そこを、この朗読を通して伝えたいと思います」(岡本)
「内向」あるいは「余命」と決して、明るくないワードが並ぶが、稽古を見て、この朗読劇の際立った素晴らしさは、会話劇のユーモラスさだと思った。なにより直田の桜良と岡本の「僕」が織りなす「何気ない会話」を、実際彼らが楽しんで演じているのがそのテンポ感から伝わった。
 また、桜良の親友・恭子を演じる原の鋭いツッコミも、活き活きとしたアクセントとして作品に欠かせないものに。恭子は、桜良のことを愛してやまないゆえに、「僕」に手厳しいのもご愛嬌。原は「僕」の母や「桜良」の母といった女性キャラクターをも演じながら、恭子役を担っていた。

岡本(左)と直田姫奈(中央)、原紗友里(右)

■表現によるアンサンブルに注目!

 物語後半、「僕」と桜良の日々が次第にかけがえのないものになっていく中、「僕」の心の揺れ。そうしたものを二人が原作・朗読劇の台本から読み取り、繊細に演じているのが伝わってきた。
 とくに後半の展開は、感情の高まりをどう表現するのか、声優のキャラクターへの解釈が問われる。稽古では、その場面を岡本が真骨頂である慟哭で魅せる。また、原が怒りを露わにし、直田が心から笑う。それぞれのアンサンブルに、本番が楽しみになるばかりだった。
 台本を最終ページまで演じ切ったキャストに総評を語る保科は、感情の強弱のバランスなどを個別に話して表現を共有。抑制的な舞台演出の朗読劇なだけに、その芝居のディテールをより追い求める演出家と声優たちの姿があった。稽古終了後、稽古中は一度も席に腰を下ろすことなく、作品に対峙した岡本に、話を聞いた。

■「僕」役岡本信彦本番直前コメント!「いつ決壊してもおかしくない感情」を演じる

――まず、本日の感想をお願いします。
岡本 今日の稽古では、直田さんたちと掛け合うことで、いろんな課題が見えたのが良かったです。このお話しの中でピークをどう作るか、どのように「僕」の中の心境の変化を生み出すのか。それが大体見えてきて、ここでこうやろうかなというのも少しだけ見えました。
――その課題についても教えてください。
岡本 今回は地の文であったり、「僕」のモノローグの役割を、僕の出演回では伊東健人くんが担当されるんです。けれど、そこのバランスが難しいなと思いました。二人でちゃんと同じ方向を向かないと、言葉が嘘になってしまいそうだな、と。そこは二人で「僕」というキャラクターを作る感覚で臨みたいです。
――お稽古を拝見していて、「僕」の感情の揺れに、すごく共鳴してしまいました。
岡本 「僕」が後半で「ある感情」を発露するシーンは、一つのピークだと思うのですが、その前の桜良の日記を読むシーンが難しかったです。「僕」の主観で読むという点で、果たして感情をコントロールしきれるのか…。その感情の起伏は綱渡りしている感覚です。いつ決壊してもおかしくない「僕」の感情をきちんと伝えられるかが、課題ですね。
――本作への意気込みは? 
岡本 集中力を維持できるよう頑張りたいですね。普段の朗読劇は、出入りがあるし、メイク直しなどができますが…この舞台はずっと出っぱなし。なので、涙と鼻水を拭うティッシュがほしいです(笑)。
――(笑)。では、本公演にいらっしゃるお客さまに向けて一言お願いします。
岡本 本作は作品を深く楽しみたいなら原作小説があるし、わかりやすく知りたいならアニメや実写映画もある作品。でも、朗読劇は耳で楽しむ作品になるので、そう考えると僕らのファンの方や、耳で朗読を聞く楽しみを知っている方々が、見に来てくださると思うんです。そうした皆さんが、こういう骨太な朗読劇をまた見たい!と思ってもらえる作品にしたいです。ぜひ前のめりで、期待していただけたら嬉しいです!

 

岡本信彦

【PROFILE】
岡本信彦
おかもと・のぶひこ
10⽉24⽇⽣まれ。東京都出⾝。B型。多くの⼈気アニメで幅広いキャラクターを演じる実⼒派声優。2009年、第3回声優アワードにて新⼈男優賞を受賞。2011年、第5回声優アワードにて助演男優賞を受賞。 近年の主な出演作として、『TIGER&BUNNY2』(折紙サイクロン役)、『可愛いだけじゃない式守さん』(犬束秀役)、『⻤滅の刃』(⽞弥役)、『僕のヒーローアカデミア』(爆豪勝⼰役)、『ハイキュー!!』(⻄⾕⼣役)、『⻘の祓魔師』(奥村燐役)、『グッド・ドクター 名医の条件』(ショーン・マーフィー役)など。


《作品紹介》
朗読劇『君の膵臓をたべたい』

【公演日時】
12月10日(土) <昼の部>12:30開演 <夜の部>18:30
12月11日(日) <昼の部>12:30開演 <夜の部>17:00
※各開演時間の30分前より開場いたします。

【会場】
ニッショーホール(東京都港区東新橋1-1-19ヤクルト本社ビル)

【出演者】
<12月10日・昼公演>島﨑信長 悠木 碧 原紗友里 中島ヨシキ
<12月10日・夜公演>岡本信彦 直田姫奈 古賀 葵 伊東健人
<12月11日・昼公演>岡本信彦 直田姫奈 古賀 葵 伊東健人
<12月11日・夜公演>島﨑信長 悠木 碧 原紗友里 中島ヨシキ

【スタッフ】
原作:住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉社刊)
脚本・演出:保科由里子
音楽:阿部篤志
照明:加島茜
映像:垣内宏太
音響:小川陽平
衣裳:ゴウダアツコ
演出助手:大下沙織
舞台監督:今井東彦 渡辺隆
宣伝美術:古谷哲史
制作:MAパブリッシング
主催:朗読劇『君の膵臓をたべたい』製作委員会

【チケット情報】
■12月10日(土)・11日(日)の各公演の機材開放により追加席の一般発売の延長決定!
発売期間:
【12月10日(土)昼の部】12月7日(水)22:00~12月10日(土)11:30
【12月10日(土)夜の部】12月7日(水)22:00~12月10日(土)17:30
【12月11日(日)昼の部】12月7日(水)22:00~12月10日(土)11:30
【12月11日(日)夜の部】12月7日(水)22:00~12月10日(土)16:00
ローソンチケット販売ページ:https://l-tike.com/kimisui-reading/
※ローソンチケットにて各公演の開演1時間前まで販売。
※先着順となりますので、上限数に達し次第、受付終了となります。あらかじめご了承ください。
※会場でのチケット販売はございませんのでご注意ください。

■12月11日(日)の2公演がZAIKOにて生配信が決定!
配信日時:12月11日(土)12:30公演/17:00公演 ※各公演3日間のアーカイブ配信あり
配信販売期間:2022年11月28日(月)12:00~12月14日(水)21:00
配信チケット販売ページ:
https://l-tike.zaiko.io/e/kimisui-reading

【朗読劇「君の膵臓をたべたい」公式サイト】
https://www.kimisui-reading.com/

【朗読劇「君の膵臓をたべたい」Twitterアカウント】
@kimisui_reading

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【画像】岡本信彦らの本作稽古の模様!