小説家・住野よるのデビュー作にして、これまで実写映画、劇場アニメ化も果たした青春小説『君の膵臓をたべたい』こと、『キミスイ』。本作の朗読劇がもうすぐ開演。主演の「僕」役でWキャストを務めるのは岡本信彦さんと島﨑信長さん。ヒロインの桜良を演じるのが、直田姫奈さんと悠木碧さん。今回は12月初旬に都内で行われた稽古場に潜入。岡本さんと直田さん、原紗友里さんが参加した読み合わせの模様をレポート、岡本さんに手応えのほどをインタビューしました。
※原紗友里さんは、実際の公演では、岡本さん、直田さんとは別日に出演のキャストになります。
※ ※ ※
■「住野先生の書かれた言葉と、みなさんの言葉に身を委ねて」
本作『君の膵臓をたべたい』は、「現実より小説の方が楽しい」という高校生の「僕」が主人公だ。彼が病院で知り合ったのは、病に侵され余命がわずかな少女・桜良。同じ学校のクラスメイトでもある彼女と出会い、「余命わずか」という秘密を知ってしまった「僕」は、「彼女の死ぬまでにやりたいこと」に付き合うことになる…。
12月初旬、都内のスタジオには、「僕」役の岡本信彦、桜良役の直田姫奈、桜良の親友・恭子役の原紗友里がいた。早速、キャストの挨拶から始まり、脚本・演出の保科由里子からは本作への想いも一同に示された。
保科は、本作の脚本も手掛けているだけに想いはひとしお。「住野先生の書かれた言葉と、みなさんの言葉に身を委ねて、この朗読劇を作っていきたいです」と語り、声優たちはより身を引き締めた様子。ほかにも、舞台美術や、セリフの読み方やSEの確認を経て、冒頭から最後まで、通し稽古が始まった。
■正反対な二人のテンション
冒頭、驚いたのは、岡本のダウナーな芝居と、直田の溌剌としたテンションの差。二人の演じるキャラクターの差を知ってはいたが、声だけになるとそれが如実。「君はさ、本当に死ぬの?」とローに問いかける「僕」に、あくまでも屈託のないハイな明るさで「死ぬよ」と答える桜良。
クラスの人気者で、誰に対しても社交的かつ明るい桜良のキュートさを、直田が表情豊かな声音で表現していく。「草舟」を自称する「僕」は、序盤彼女の行動に身を任せて付き合っていく、受けの芝居だ。
しかし、岡本の声は少しずつ変化していく。二人が旅行に行く場面がそれだ。その言葉に温度感が乗って、他人に興味のなかった「僕」が心を開く。しかし、当然その関係は長く続かない。強引に同じ部屋に宿泊した「僕」は、桜良のかばんの中にふと「あるもの」を見てしまい、絶句する。初めて他人と楽しい時間を共有し出した「僕」が一瞬で奈落に落ち、動揺するシーンにつながる。ここでは、岡本の変幻自在な緩急ある芝居力を感じる一幕だった。