■ 食の大切さを思い出させてくれる『きのう何食べた?』
次に紹介するのは『モーニング』(講談社)で連載中の、よしながふみ氏『きのう何食べた?』だ。
主人公は几帳面な弁護士の筧史朗(シロさん)と、明るく人当たりが良い美容師の矢吹賢二(ケンジ)のゲイカップル。物語では、2LDKのアパートで暮らすこの2人の日々が「食」をメインに描かれている。
おもに調理を担当するのはシロさん。倹約家で料理上手な彼が旬の野菜に一喜一憂し、ときに悪戦苦闘しながら食卓を整えていく姿はとてもほほ笑ましい。
また、ご飯を食べて心が動く場面が丁寧に描かれているのも『きのう何食べた?』の魅力だろう。いかに私たちの生活に「食」が欠かせないものなのかがわかるうえ、どんな料理にもそれぞれに物語があると思い出させてくれる。
ちなみに、無類の美食家として知られるよしながふみ氏。調理描写が細かく、料理ができあがっていく過程を存分に堪能することができるのも見どころのひとつだ。
2019年4月にドラマ化された際には、西島秀俊と内野聖陽が原作そのままの「シロさん」と「ケンジ」を見事に演じ切り、大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。2021年には劇場版が公開されたが、今後も折に触れて放送してもらいたいと切に願う。