漫画原作の実写化は難しいと言われている。人気があればあるほど、ファンタジー作品であればあるほど、その多くが大コケしてきた。その理由はきっと、私たちの大好きな作品がどうしたって二次元の枠を超えられないからだろう。
そんな実写化作品だが、実は“とあるジャンル”のみ大成功を得ている。そのジャンルというのが「ご飯系漫画」。ファンタジー感が強い九井諒子氏の『ダンジョン飯』のような実在しない食材を扱ったものにかんしてはアニメのほうが適しているが、現代日本を舞台にし、「食」をテーマにした作品は実写化との相性が抜群に良いのだ。
そこで今回は、実際にドラマ化もされた人気の「飯テロ漫画」のおすすめを紹介したい。
■ オンエア後には店の予約が取れなくなるほどの影響力!『孤独のグルメ』
実写化されたご飯系漫画といえば、原作・久住昌之氏、作画・谷口ジロー氏が手がけた『孤独のグルメ』(扶桑社)を思い出す人が多いだろう。単行本は全2巻と少ない巻数ながらも、ドラマは今年シーズン10の放送が決定している言わずと知れた人気作。ドラマ版では松重豊が主人公の井之頭五郎を好演している。
輸入雑貨の貿易商を営む五郎が日本各地で訪れる店が各話の舞台。ひと仕事終わったタイミングで腹を空かせた五郎が店を探し、注文した料理を実に美味しそうに平らげる描写に食欲がそそられる。「食べっぷりがいい」のは、それだけでエンターテイメントだと思う。
また、取り上げられる店舗は実在の飲食店。ドラマでオンエアされると、軒並み予約が取れなくなってしまうほど影響力は大きいようだ。
個人的には、原作で描かれた鳥取市役所の「スラーメン」(現在は閉店)や、東京大学地下の本郷中央食堂名物のエコノミー定食など、普段であればなかなか訪れないような場所に出向き、食事をするエピソードがとくに印象に残っている。
普段、飲食店を探すときには口コミや外観などで選びがちだが、仕事相手からのアドバイスや自分の勘を信じて決める五郎の店選びは、“自分では選ばないような店”に連れて行ってくれるから面白い。
真剣にメニューを選び、ほかの客の注文をのぞき見し、胃袋の赴くままに食を堪能する五郎の姿に引き込まれること間違いなしの『孤独のグルメ』。残念ながら、谷口ジロー氏の死去により漫画の続編は望めなくなったが、ドラマはこれからもシーズンを重ね、視聴者へ最高の飯テロを届けてくれるだろう。