『スラムダンク』安西先生に学ぶ“言動の魔力” 宮城リョータ、三井寿、桜木花道をその気にさせた「巧みな人心掌握術」3選の画像
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 90年代に大ヒットし、20年以上も多くのファンの心をつかんで離さない井上雄彦氏の『SLAM DUNK(スラムダンク)』。本作は元不良少年の桜木花道が、バスケ初心者ながらにさまざまな技を習得し、真のバスケットマンになっていく様を描いた物語だ。

 主人公の花道だけでなく、仲間、監督など、さまざまなキャラクターから心に残る名言が飛び出すのも作品の魅力の1つ。中でも湘北メンバーを時に励まし、時に鼓舞した湘北高校バスケ部監督の安西先生の言葉は、とくにグッとくるものがある。

 個性派ぞろいの湘北を導いた安西先生の巧みな人心掌握術には、私たちのリアル世界での人間関係を円滑にするコツもたくさん散りばめられているように思う。そこで今回は、最強と名高い山王工業戦を前に、戦々恐々としていた湘北メンバーに対しての安西先生の発言にスポットを当ててご紹介したい。

■具体的な長所を挙げて自信を取り戻させる

 高校バスケ界の絶対王者「山王工業」との試合を目前に控えた練習にもかかわらず、息が上がってしまうほどの緊張を見せる湘北メンバー。

 そんな中でも、山王を束ねるキャプテン・深津一成とマッチアップすることになったポイントガード・宮城リョータは、試合直前だというのにガムシャラに走りこみを続け、浮かんでくる“悪いイメージ”と戦っていた。

 そこに突如現れた安西先生は、「PGのマッチアップではウチに分があると私は見てるんだが……」と、さも当然のように発言。

 さらに安西先生は「相手は確かに180cmと大きい……でも今さら何を恐れることがある?」「子供の頃からずっとそうだったでしょう」と、宮城にとって身長差のあるマッチアップは手慣れたものだと思い出させた。

 その上で「スピードとクイックネスなら絶対負けないと思っていたんだが…」と、宮城が勝っている具体的な長所について言及。この安西先生の言葉からは、宮城の最大の武器をふだんからしっかり把握していることや、彼の能力に絶大な信頼を置いていることが伝わってくる。

 その何気ない安西先生とのわずかなやりとりで、宮城は「オレに分がある…!!」と気持ちを切り替えることに成功。誰かを勇気づけるときに、抽象的なエールを贈るのではなく、具体的な長所を端的に指摘したことが相手を冷静にさせ、持ち前の自信を取り戻させるきっかけになったのだろう。

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