ファミコン『ドラゴンクエスト3』34年前の伝説的“発売日”! ソフト強奪に補導者続出、全国各地で起きた「社会現象」を当時の新聞はどう報じたかの画像
スクウェア・エニックス『ドラゴンクエスト』公式サイトより  (C)1988, 2019 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved. (C)SUGIYAMA KOBO

 今から34年前となる1988年2月10日に、ファミコン用RPG『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売となった。今でも新作が続く人気シリーズの3作目とあって発売前から大きな話題を集め、2月10日当日は大人も子どもも家電量販店の前に並び、『ドラクエIII』の購入のために真冬の寒さを耐え抜いた。池袋のビックカメラには、徹夜組も含めた1万人以上が2キロメートルにも及ぶ大行列を作るなど、ゲームタイトルと同じく「伝説」の発売日となった。

 これらは社会現象として各メディアでも大々的に取り上げられたが、今回は当時の新聞記事を確認し、日本中が『ドラクエIII』に熱狂した1988年2月10日の光景を振り返りたい。

■学校をズル休みした小中高生たち

 この当時、国会議事堂では浜田幸一衆院予算委員長が文字通り大暴れしていた。浜田氏の野党に対する強硬的な発言は連日のように新聞をにぎわせ、永田町はまさに「ハマコー劇場」のような状態だった。一方、外交問題では東芝機械のCOCOM違反が取り沙汰され、日米関係に大きな陰りが及んでいた。なお、この時代は日米貿易摩擦の深刻化によるジャパンバッシングがアメリカ各地で巻き起こっていたことを忘れてはならない。

 ハマコーが国会議事堂で握り拳を振り上げていた頃、ごく一般の日本人は『ドラクエ』フィーバーに沸いていた。

 ここで、1988年2月10日の朝日新聞夕刊の1面にある記事を引用したい。見出しは「授業さぼって? 殺到 ファミコン旋風再び」とあった。

「子供たちの間で人気のファミコンソフト『ドラゴンクエストIII』が10日、全国一斉に発売となった。カメラ店の売り場は、どこもごった返しだ。
(中略)
人気がやや下降気味だったファミコンブームの中で、このソフトは『反射神経だけでなく、自分が主役になれ、頭を使うのが魅力』と行列していた高校生は“解説”。定価5,900円を各店3割程度値引き。発売前から人気が過熱気味で、学校を休んで買いに行く学童が出ないように都教委から区市町村教委へは異例の情報通達が出ていた。」(朝日新聞夕刊1988年2月10日1面より。日付、数値を表す漢数字はアラビア数字に置き換え)

 ここで注目すべきは、朝日新聞の記者が高校生に話を聞いたという点だろう。1988年2月10日は水曜日、すなわち平日である。祝祭日というわけでもない(翌11日は建国記念日)。つまりこの高校生は、学校をサボって家電量販店に並んでいた可能性が高いということだ。

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