■「変な日本」が舞台

appleII版、スマホ用ゲーム『カラテカ クラシック』プレイ画面より

『空手道』が競技の世界を描いていたのに対し、『カラテカ』が描いたのは映画もしくはドラマだ。ファミコン移植版では大幅にカットされているが、本作には主人公の空手家がアクマ(ファミコン版では「アクマ将軍」)にさらわれたマリコ姫を取り戻すために和風の城へ突入するというオープニングがある。明らかに日本の文化を取り違えたビジュアルの城で、アクマという名称も謎だが、そこでは幾人もの手先が待ち構えている。彼らはけして複数人で襲いかかることはしない。敵も空手家だから、出撃は必ずひとりずつである。

『カラテカ クラシック』プレイ画面より、appleII版のアクマ
ファミコン版『カラテカ』ではシンプルな道着姿になったアクマ(名称もアクマ将軍に)

 おどろおどろしい効果音とともにアクマが手下に出撃を命じる場面や、その手下が空手家に向かって走り寄る場面はまるで映画のワンシーンのようで、敵と空手家が交互にカットインされる演出も面白かった。声はないが、AppleII版のアクマは妙な着物を着込んだキャラで、想像で恐ろしさを十分補えるほどのなめらかなグラフィックだった。

 ファミコン版ではさざなみ音がBGMになるだけの舞台で、キックとパンチでひたすら敵をなぎ倒していくシンプルかつ静かなゲームとなっているが、オリジナルの『カラテカ』はそうした「変な日本」が描かれた映画的なゲームだった。このころの日本は世界最先端を行く技術立国として君臨していた時代。クルマもバイクも黒物家電も半導体も、いいものはみんなメイド・イン・ジャパン。魅力的な工業製品を次々と輸出する日本の文化に、アメリカ人が関心を示すのは自然の流れだったのかもしれない。

ファミコン版『カラテカ』プレイ画面より

 アメリカ人の目から見て、日本人の「礼」も奇抜かつ斬新なものだったのか、『カラテカ』にも「礼」の動きが導入されている。これは一番最初の敵に対してのみ有効なアクションで(その敵が礼を返してくれる)、以降は特に意味のないモーションだ。このあたりはファミコン版ではしっかりとした意味づけが加えられており、「戦闘前に礼をしないと敵が極端に強くなる」という仕様になった。

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