■何度聴いてもゲームの感動がよみがえる
『ドラクエ』はRPGなので、物語の最後を締めくくるエンディング曲からも選びたいところです。それで『ドラクエII』の『この道わが旅』と迷ったのですが、ひとつだけ選ぶとなると、やはり『ドラクエIII』の『そして伝説へ』は外せませんでした。
イントロのファンファーレのあと、ゆったりとした曲調に転じると、これまで旅してきた世界をふり返るように巡る映像が流れ、ゲームと音楽が一体となった最高のエンディングにいざなわれます。オーケストラが奏でる『ドラクエ』シリーズの曲は何曲も聴いていますが、『そして伝説へ』だけは実際にゲームのエンディング映像も楽しみながら聴くのが一番心に響きます。
そして最後に自分が『ドラクエ』の中で一番好きな曲として挙げたいのが『ドラクエII』のパスワード“ふっかつのじゅもん”入力時に流れる曲『Love Song 探して』です。ゲーム中でも、ペルポイの町の地下にいる町の歌姫「アンナ」に話しかけると、この曲が流れるというしかけがありました。
この曲はタイアップもされており、アイドル歌手だった牧野アンナさんのデビューシングルになっています。とてもポップなアイドルソングで、今でもこのゲーム音楽を聴くと歌詞も一緒によみがえってくる大好きな曲です。歌詞のつけられた『ドラクエ』の曲はいくつかありますが、個人的には『Love Song 探して』が一番ピッタリくる曲だと思っています。
すぎやまこういち氏がこれまでに作られた『ドラゴンクエスト』シリーズの楽曲は、500曲以上。そして現在製作中の最新作『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』の作曲が、すぎやまこういち氏の最後のお仕事になったそうです。
何よりすごいと思うのは、すぎやま氏が初代『ドラゴンクエスト』の作曲を担当したのが55歳の頃ということ。その年齢から新たな分野(ほぼ同時期にエニックスのPCゲームの音楽を担当)に挑戦し、そこから35年間もシリーズを支える曲を作り続けたのは並大抵のことではありません。これまで私たちに多くの感動と興奮を与えてくれた、すぎやまこういち氏に謹んで哀悼の意を表します。