■「生身の高岩成二がそこに居る」ことに圧倒
今回コラムで書こうと思い、はじめは高岩さんの細かい部分を優先して観察していたんですが、お芝居のうまさから徐々に役に引き込まれていってしまい、そんな目的を忘れてしまっていたんです。この繰り返しなんです。よし、観察するぞ→役に引き込まれて観察忘れる→舞台転換→我に返る→観察するが役に引き込まれる。あの人が仮面ライダーだったとかもうそんなことはどうでもよくなってて、しっかりと俳優「高岩成二」に圧倒されていました。
もちろんファンにはうれしいアクションもありましたが、マスクとスーツという枷がないとこんな軽やかになるのかと驚かされました。ライダーのときでも十分にすごかったんですが、目の前で初めて観て「あ、こんなにヤバかったんだ、このおじさん……」と思わず苦笑い。50代の動きじゃねぇぞと。高岩さんだけではなく他のJAEのメンバーの中にも50代でバリバリ動いてる方はいますからね。まったく恐ろしい大人たちの集まりです……。
自分の中で最大のポイントは「汗」でした。今までは変身後の高岩さんが動いている姿しか見たことがなかったので、汗をかいている姿なんて初めてだったんです。
あたりまえのことなんですが、生の舞台なので動いてセリフを発すれば汗が出てくるんです。それがとても新鮮だったんです。しかもその汗に照明が当たって、それが美しいんですよね。肩を上下させて呼吸を整えながらも表情は役になりきり、噴き出した汗はゆっくりと額から顔へと伝い首に落ちてゆく。今までなら無機質なマスクが一枚挟んであったので、どこか超人的な存在感が拭えなかったのですが、この「汗」が“生身の高岩成二がそこに居る”という証明になり観に来た価値があったなと強く感じました。