■劇場版の新規映像から感じたモノ

 私自身はあの劇場版のシーンは、エマ・シーンという女性がラーディッシュのクルーから大切な仲間だと認識されていた証にも思えたし、ヘンケン艦長が立場上言い出せないであろう指示をクルーが代弁したようにも受け取れた。

 真実はどうなのか分からないが、少なくても初めてテレビ版を見たときのヘンケン艦長に対する印象からは大きく変わったことは事実だ。

 もちろん艦長たるもの、艦と乗組員の安全を優先すべきだったのだろう。結果的にラーディッシュを沈め、おそらく大勢のクルーが彼と同じように犠牲になったのだから艦長としての責任を問われるのは仕方がない。

 おそらくそれはヘンケンにも分かっていたはずだ。しかし、それでも愛する女性の危機を目の当たりにして冷静ではいられず、逡巡しながらもクルーの進言を受け入れてしまったのは、ある意味人間らしいと思える。

 そのあたりを鑑みて、あらためて第49話「生命(いのち)散って」を見返すと、艦が轟沈する直前のヘンケン艦長がガンダムMk-IIが健在なことに気づいて「エマ中尉……」とだけつぶやいてこと切れるシーンに重みを感じるし、胸が熱くなる……。

 本記事で紹介してきた“愛に殉じた”3人は、いずれもメインキャラクターではないところも『ガンダム』というシリーズの奥深さと言えるだろう。今回は私の好きな宇宙世紀の作品から選ばせていただいたが、ガンダムが好きな方ならそれぞれの胸の内に思い当たるキャラクターがいるのではないだろうか。
 

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