■素晴らしいストーリー!! でも「RPG」としては欠点も…

 ここまでストーリーについて書いてきましたが、RPGはやはりゲームシステムも重要。プレイしているときに感じたことを、感じたままに書きます。

 まず、この世界には「魔法」がない(天才発明家はいますが……)ので、いわゆる「ルーラ」や「テレポ」のような瞬間移動が自由にできません。そのため、移動がめちゃくちゃかったるいのです。一応、アイテムやワープ地点があるにはありますが、いろいろ不便にできています。

 また、道がやたら長く、ダンジョンのような複雑さもあまりなく、宝箱のうまみもあまりありません。RPGにおける探索というのは、たとえ長くとも「よいアイテム」の存在によって、そのストレスが喜びに変わるものですが、それがない探索がかなりキツいです。

 序盤から終盤まで回復呪文がないということもあり、アイテムで回復することが前提のゲームバランスになっているのかもしれませんが、本作はとにかくお金が余りまくるので、有用な回復アイテムも大量に買えます。しかし、その分、アイテムの価値は下がります。いくらでも買えますからね。

 店売り装備のラインナップも少なく、面倒な移動をさせられまくるサブイベントをこなしてようやくもらえるレアアイテムが「そこそこ」。また、サブクエストを通じて集めることができるのが、ゲームの進行とは関係ないキャラクターデザインの設定資料なんですが、本作のデザインがめちゃくちゃ好きなファン以外にはあまり喜ばれそうにないものかもしれません。正直なところ、達成感より徒労感を感じてしまうことが多かったです。

 なので、ストーリーや世界観よりもRPGのゲーム性を楽しみたい!という人にはおすすめできない作品かもしれません。私はストーリーに大変満足しているので、買ってよかった、遊んでよかったと思いますが、周りのゲーム好きに大手を振って本作をおすすめできないのは、このゲームとしての不親切さとボリュームの少なさにあります。

 ですので、もしこれから購入しようかと悩んでいる方は、私が書いたこれまでのことをぜひ参考にしたうえで決めると良いと思います。

■結末が気になった!という方は買ってもいいかも!

 ということで、わりと真面目に『わるい王様とりっぱな勇者』についてご紹介させていただきました。これまで、それなりにRPGを遊んできましたが、その中ではある意味異質なゲームだったなと思います。心から泣けて、思わず拍手してしまった最高の終わり方を見たにもかかわらず、周りには簡単におすすめしにくいというゲームは本作が初めてです。

 後半は不満点をいくつか並べましたが、何度も言うように私個人としては大変満足しています。絵本を読んでいると感じるノスタルジーや、子どもの頃の記憶、そういったものが何度もこみ上げてきて、グッとくるシーンが随所にあります。

 優しい世界観の中で形成される新たな勇者像。久しぶりにRPGで遊んでみたいなと思っているそこのあなた。もしよければ、お手に取ってみませんか?

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