■悪徳商人への道
はるか海の向こうのアユタヤでは、洋酒やガラス器、そして阿片が手に入る。江戸では世話人を通じて、裏稼業の方々へ高値で売ることができる。
それまで金蔵に数千両を貯めるのも一苦労だったのが、抜け荷のおかげで数十万両もの小判が流れてくるようになる。恐らく洋酒とガラス器は賭場で大店のボンボンに、阿片は岡場所で客と夜鷹に売っているのだろう。ひっひっひっ、これはやめられませんなぁ……。
これらの抜け売りは雇った世話人を通じて行うが、回数を重ねると世話人も良心の呵責に耐えかねるのか、次第にこちらの言うことを聞いてくれなくなる。だから本業をおろそかにしないよう気をつけよう。
また、それとは別にかわら版屋を利用して、自らの大衆人気を上げる行為もやっておく。かわら版屋は人気商人番付というものを作っていて、これに名前が載るとふだん行動する上でいろいろと有利なことがあるはず。腹は黒くていいから、背中は白くあるべきだ。道で困っている人がいたら、躊躇なく小判をふるまおう。
■「宝永大噴火の描写」がないのが欠点だが……
この『天下御免』は現在、会員制ゲーム配信プラットフォームスタジオ「EGG」でプレイ可能。非常に細かい部分まで描写されているタイトルで、元禄年間を代表する一大事件・赤穂浪士討ち入りもイベントとして挿入されている。ただ、筆者としてはそれよりも宝永年間の南海トラフ地震と富士山大噴火の描写が見当たらない点に目が行ってしまった。もしかしたらどこかにちゃんと描かれているのかもしれないが、いずれにせよ赤穂事件よりはるに小さい扱いだ。
が、広域的な視点で日本史を見れば、赤穂事件より宝永大噴火のほうが重要な歴史イベントである(江戸にも富士山の灰が降ってきた)。昔の歴史ゲームや大河ドラマは、自然災害をはしょってしまっていることが多いが、『天下御免』もその例外ではない点が残念だ。
しかしそれを補って余りあるニッチさ、マニア性のあるゲームであることは言うまでもない。