■想像力をかきたてる効果音が怖すぎる!
話を『弟切草』の本筋に戻しますが、“サウンドノベル”と銘打たれていただけあって、音にもこだわって作られていました。雷鳴や水音、ガラスの割れる音、時計が時を刻む音、階段のきしむ音、そして猫の鳴き声など……ファミコン時代のゲームとは比較にならない臨場感ある効果音がプレイヤーの恐怖心や不安感を駆りたててくれます。
ついでに言うならこの頃の私は短大生で、『弟切草』を所持していた友人ともども、ちょっとすきま風の入るアパート暮らし。リアルのほうでアパートがきしむ音と『弟切草』の効果音の相乗効果で、よけいに怖く感じました。
ゲーム中には短いながらも緊迫感のあるBGMが流れる場面もありますが、それ以上にささいな効果音のほうが強く印象に残っています。
■新たな時代を切り拓いた画期的作品
『弟切草』を生み出したサウンドノベルというチュンソフトの新ジャンルは、その後『かまいたちの夜』や『街』などが継承。ほかのメーカーからも同じようなコンセプトの作品がリリースされました。
また美少女ゲームの方面にも影響を与え、女の子のかわいい映像を活かした“ビジュアルノベル”として発展し、その流れは現在も続いています。
ファミコンを超えるスーパーファミコンというハードで、あえてテキストとサウンドが主体のゲームを作るという発想と決断が、アドベンチャーゲームに新しい風をもたらしたのかもしれません。