■選択肢により千変万化する物語に驚愕!

 まず驚いたのが、選択肢によって物語がどんどん“変化”していく点です。

 主人公(プレイヤー)と恋人の奈美が山道をドライブ中に乗っていた車が故障。さまよった末に、あたり一面に弟切草が咲く洋館に足を踏み入れる……というのが本作の導入部分。そしてこの不気味な洋館を舞台に物語が展開していくのですが、プレイヤーが選んだ選択肢によって「サスペンス」や「ホラー」など、さまざまな物語が紡がれていきます。

グラフィックは地味だが、それがシナリオに没頭させてくれる

 この頃のアドベンチャーゲームと言えば、ゲームオーバーこそあれ、基本的に一本道のストーリーを読み解いていくというのが定番でした。しかし『弟切草』はマルチエンド、それも大量のエンディングが用意されていたのです。

 それもただエンディングの内容が変わるだけでなく、ストーリー展開自体がそれぞれ異なるので、繰り返しプレイするたびに別の作品を遊んでいるような感覚に陥ります。

 しかも『弟切草』にはゲームオーバーがなく、数あるエンディングのどれかに必ず到達。さらにクリアしたデータはプレイしている「しおり」に蓄積され、クリア後にまたゲームを始めると「見たことのない選択肢が現れる=新たな展開が生まれる」という仕組みになっていました。

 さらに新たなサスペンスやホラー展開が増えるだけかと思いきや、唐突にギャグコメディのようなストーリーが繰り広げられたりと、まったく先が読めません。まるでビックリ箱のような展開にワクワクさせられ、好奇心に抗えずに前のめりになった覚えがあります。

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