赤川次郎『セーラー服と機関銃』
©KADOKAWA

■色彩感覚は誰にでもあるんです

ーー先生の絵は色がぱっと目に入ってきて、どれもとてもキュートで艶に満ちています。その色彩感覚は、どうやって身につけられたのでしょうか。

中村 色彩感覚は絵を描かない人だってあるんですよ。だから、意図的な人は別として、みんな街でビックリされる服は着てないじゃないですか。 つまり、全員持ってるのですが、それって目立たないってことでもあるので、そのバランス感覚からどれぐらいはみ出せるかって勇気の問題だと思うんです。
たとえば、ショッキングピンクのワンピースを気にいって買っても、会社に着ていくには派手すぎるし、結婚式の2次会なら花嫁より目立ってもいけないし…とTPOを考えて、“じゃあ、私いつ着るねん、これ”みたいなことってあると思うんです(笑)。

でも着ようと思えば、明日にでも着て街に出かけられるんですよね。だから、僕が特別に感覚が鋭いということはなくって、多分人より少しだけ色の知識を知ってるのと、人よりちょっとだけ恥知らず…なんだと思います(笑)。
あとは、母が今も大学で色のことについて教えているので、それで学んだところもあるかもしれない。特別、何かを教えてもらったわけじゃないんですけど、 やっぱり母が選ぶ家具や子供服など、そういうものは脳内のパレットになっていたんですね。そこから僕が無意識に色を選んでいってるのかなとは思ってますね。

ーーご自身の記憶と絵の色が、結びついてるということですか?

中村 記憶というか、体験ですね。見るだけじゃなくて、小学生のときは体を犠牲にして、他の子が選らんでないような色の服を着ていってました(笑)。やっぱり小学校のときは、みんなと一緒の色の服を着ていきたい。なのに、母が「この中から選んで」って言う服が黄色だったり、緑だったりして。

当時の小学生男子は進んで選ばない色も多くて(笑)。着たいのは青か黒なんですよね。今はもっと多様ですが、当時の男の子は、ランドセルも筆箱も青か黒でした。だから当時は自分の服の色恥ずかしいなとも思ってましたが、今はそれが絵を描くために良かったと思っています。

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