岡本信彦「“僕”のようなキャラクターは、初めて演じるかもしれません」/朗読劇『君の膵臓をたべたい』インタビュー(第2回)の画像
朗読劇『君の膵臓をたべたい』岡本信彦インタビュー(第2回)

この冬、初めて朗読劇として上演される住野よるのベストセラー小説『君の膵臓をたべたい』。「WEB声優MEN」ではこの公演を記念して、主人公「僕」役の岡本信彦の独占インタビューを展開中だ。

周囲との関わりを極力避け、いつも一人ですごしている高校生の「僕」は、クラスメイトの山内桜良の秘密を思いがけず知ってしまう。それは彼女が膵臓の病気で、元気に見えてはいるが、実は余命いくばくもないということ。それから「僕」は桜良に振り回されるようになるが、共にすごすうちに正反対の二人は、お互いに憧れを抱くようになっていく。

「僕」、桜良、そして桜良の親友・滝本恭子、クラスメイトの“ガムの彼”を演じる4人の声優によって紡がれていく、今回の朗読劇。岡本は本作とどのように向き合おうとしているのか。そして朗読劇の魅力についても、じっくりと語ってもらった。(全3回)

インタビュー第1回はこちら

 

※ ※ ※

 

ドライそうに見えないのにドライな僕とは真逆

 

撮影/高橋しのの

――岡本さんが演じられる「僕」は、他人に興味を持たずにいつも一人で本を読んでいる高校生です。周囲の人々の関わりを大事にしているヒロイン・桜良とは対照的な人物ですが、岡本さんは彼をどう捉えていますか。

 

桜良は「僕」を“強い”という言葉で表現しますが、僕自身は彼を“弱い”と思っています。そして、誰よりも優しい人なんだろうなと。人に関わったら関わった分だけ傷付くことを知っていて、だからこそ人に近寄らないようにして保険を掛けている。どちらかというと心が繊細でダメージを負いやすい人なので、僕自身とはちょっと違う人種ではあると思います。

僕自身は割とメンタルがタフなほうというか、ある意味ではドライという表現が近いタイプで。ドライそうに見えないのにドライなのが僕だとしたら、ドライそうに見えるけどドライじゃないのが「僕」。実はすごく優しくて、しっかり人のことを見ている、他人思いな人だと思います。

 

――もし「僕」のようなクラスメイトがいたら、岡本さんならどうします?

 

どちらかと言うと、話し掛けると思います。サラッとした受け答えになると思いますが、個人的には興味が湧きますね。しゃべらない人って、日々思っていることや考えていることがたくさんあるんだろうな、と思いますし。

 

――本作に登場する「ガムの彼」みたいですね。

 

そうですね、そんな感じになると思います。

 

――「僕」はどちらかと言うと“静”のキャラクターですが、岡本さんというと溌溂とした“動”の役柄の印象があります。

 

そうですね。僕が演じてきた役柄の中で一番感覚的に近いのは、『ボールルームにようこそ』という作品で演じた、兵藤という役かなと思ってます。競技ダンスの天才で、多くを語らず、ひたむきに目標に向かって突き進むキャラクター。

 

――兵藤清春ですか? 彼には“強い人”というイメージがあったので、意外です。

 

彼は強いですよね! 挫折を味わっても前に進む、めちゃくちゃ強い人。でもあまり人と関わろうとしない、内向的な人でもあるので、そこが近しいと感じてます。ただ「僕」は何か目標があるわけでもなく、本が好きという気持ちはあるにせよ、黙々と読み続けて人と関わらないようにしているので……初めてかもしれませんね、こういうタイプのキャラクターは。

 

――これほど数多くの役を演じてこられた岡本さんでも、初めて演じられるタイプのキャラクターでしたか。

 

考えてみたら、ないですね。僕は感情を露にするキャラクターのほうが多くて、「僕」を見ていると「なんでここまで我慢できたんだろう」と不思議に思ってしまうほどで。そういう意味で言うと“強い”人とも言えそうですが、果たして“強い”なのかどうか、蓋をしているだけなのかは、一度やってみないとわからないですね。触れてみれば、段階的にわかりそうな気がします。

 

 

芝居が好きな役者なら、この作品は苦しいけど楽しい

 

撮影/高橋しのの

――島﨑信長さんとのWキャストというのも、今回の公演の注目ポイントですね。

 

多分ですけど、信長くんはこういう作品が好きなタイプだと思います。信長くんとはプライベートでもよく会うので、いろんな芝居の話もするんですよ。その中で、相手の言葉を聴くことで芽生えた感情を出す芝居や、言葉のキャッチボールで作っていく芝居が好きなタイプの役者だと感じていて。まさにこの作品は、「僕」と桜良が一つひとつ積み重ねていく作品だと思うので、ものすごく楽しいんじゃないかなと思います。芝居が好きな役者は楽しいと思いますよ、この作品は。最後はもちろん苦しいけど、楽しい。だからこそ、Wキャストで1日に1公演で、その1回に全力を出せることがありがたいですね。

 

――Wキャストですと、比較されるので嫌だなという考え方もあると思いますが。

 

もちろんそれはあると思います。でもWキャストのどちらが好きだったか、おもしろかったかというのは、お客様の中でも分かれる印象があるんですよ。それって食べものと似ているところがあるなと。「焼肉か、寿司か」みたいなものだと思うんですよね。もちろん、その日の演者の出来もありますが、ご覧になる方のコンディションや状況などでもまた変わってくる気がします。

 

――同じ映像作品であっても、観るタイミングによって感じ方が違うように。

 

はい。ゴリゴリに「感動させてやるぞ!」って芝居をしたとして、それが刺さる方もいれば、「いや、ちょっと今は胸やけしますわ」と感じる方もいる。それはそのときの相性だと思うので、どちらがいい悪いというのはないと思ってますね。

 

撮影/高橋しのの

 

 

  1. 1
  2. 2