『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』インタビュー3/木下麦監督が惹かれた映画とその原点の画像
『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』インタビュー3/木下麦監督が惹かれた映画とその原点の画像

全3回でお送りしてきた、『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』の木下麦監督インタビュー。テレビシリーズを新たな視点で描き、最終回の「その後」を提示している本作は、いま必見の映画だろう。最後は、本作に影響を与えた意外な映画作品のことや、アニメーション作りそのものの魅力を明かしてくれた。

 

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「何かを表現しながら生きていきたいと思っていた」

 

――ところで、監督は幼少期、どんなお子さんでしたか。

よく絵を描いてましたね。小さいときがいちばん絵を描いていたと思います。あとは、外で遊ぶことも多かったように思います。川下りや山登りとか、わりとアウトドアで遊ぶことも多くて、誰も踏み込んでないところに行って遊びたい気持ちがありました。

 

――そこから10代になって、本格的に絵の道に進もうと?

絵はずっと描いていたので、漠然と美術大学に行こうとは思っていました。ただ、そのときは将来アニメの仕事に就くとは思っていなかったです。ただ、何かを表現しながら生きていきたいとは思っていたんです。

 

――では、様々な情報をご自身の中に、インプットしている時期だったんですね。

そうですね。やっぱり、高校生の頃にいろんな絵を観たり、インターネットを通して、映画や本をいろんな人に教えてもらったり、いろんな知識を蓄えていったような気がします。

 

――その後、アニメ作りを志したきっかけは?

大学の授業ですね。アニメーションを作る課題があって、そのときに楽しかったんですよね。実際、それを自分で作ったあとに、クェンティン・タランティーノ監督やフランシス・フォード=コッポラ監督などの作品に初めて触れたことで映像の奥深さを知っていったし、感動したところがあるような気がします。

 

――実際、作られた作品の反響はいかがでしたか。

映像作家の原田大三郎先生という、言葉少ない、強面の先生がいらして。その先生が「初めてにしてはやるじゃねえか」と褒めてくださったのは、すごく覚えていますね。ほかにも、2本目に作ったコメディアニメを講評にかけるときに、僕は大失敗すると思ったんです。そうしたら、クラスのみんなが爆笑してくれて。そういう成功体験を受けたのは大きかったのかなと思います。映像が人々に与える力そのものを、初めて実感しました。

 

「北野武監督らの現実主義的でドライな演出に影響を受けた」

 

――本作では、日常を逸脱していくキャラクターや、狂気を抱えたキャラクターが登場しますが、監督はどんな映画に影響を受けてきましたか。

邦画では北野武監督や、豊田利晃監督、是枝裕和監督、西川美和監督などの邦画をよく観ていて、かなり影響を受けた気がします。いま挙げた監督たちの作品は、どの映画も現実主義的でドライな演出があると思うのですが、その人間への目線や、世界の描き方が好きなんです。

 

――海外の映画では?

コーエン兄弟や、マーティン・スコセッシ監督の映画が好きですね。人間の負の部分にフォーカスを当てているような作品が好きなんです。

 

――マーティン・スコセッシ監督の代表作は『タクシードライバー』ですし、コーエン兄弟作品で、主人公が日常でふいに巻き込まれる不条理な現実は、本作とどこか通じるものがありそうです。

そうかもしれませんね。僕自身、人間の負の部分にちゃんと目を向けることが、作り手として必要だと思っていて。自分は映像の演出をする人間ですが、脚本の此元和津也さんもそういう「闇」を脚本で描かれる方で、互いに共通項があるように感じていますし、『オッドタクシー』はそれを映像でうまく描写できた作品だと思っています。

 

 

「エンドロールは相当な情報量を詰め込んでいる」

 

――あらためて、監督にとって、テレビシリーズから続いたこの『オッドタクシー』はどんな作品になりましたか。

僕もこれだけ大きな作品、コンテンツになるというのは、正直企画の段階では、想像していませんでした。でも、僕にとって大切な作品ですし、この作品を作ったことを生涯自慢し続けると思います。

 

――最後にこれから映画をご覧になる形へのメッセージをお願いします。

エンドロールは相当な情報量を詰めこんだので、逃さないでほしいですね。あとは最後に、タクシーの中で何が起きたのか、それも含めて劇場で観ていただきたいです。
また、誰の視点か語られているのかを、探りながら観るとおもしろいと思うんです。キャラクターの視点や彼らの言葉の隅々も工夫しているので、楽しんでほしいですね。

 

 

PROFILE きのしたばく
多摩美術大学在籍時からイラストレーター、アニメーターとしての活動を開始。自ら企画したオリジナルテレビアニメーション『オッドタクシー』で初監督、キャラクターデザインを担当した。

 

 

 

 

 

《作品紹介》
『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』
絶賛公開中

【キャスト】
小戸川/花江夏樹 白川/飯田里穂 剛力/木村良平 柿花/山口勝平 二階堂ルイ/三森すずこ 市村しほ/小泉萌香 三矢ユキ/村上まなつ 大門兄/昴生(ミキ) 大門弟/亜生(ミキ) 柴垣(ホモサピエンス)/ユースケ(ダイアン)馬場(ホモサピエンス)/津田篤宏(ダイアン)ほか

【スタッフ】
企画・原作:P.I.C.S. 脚本:此元和津也 監督:木下 麦 副監督:新田典生 キャラクターデザイン:木下麦・中山裕美 美術監督:加藤賢司 色彩設計:大関たつ枝 撮影監督:天田 雅 編集:後田良樹 音響監督:吉田光平 音響制作:ポニーキャニオンエンタープライズ 音楽:PUNPEE VaVa OMSB 音楽制作協力:SUMMIT, Inc. 音楽制作:ポニーキャニオン アニメーション制作:P.I.C.S. × OLM 配給:アスミック・エース 製作:映画小戸川交通パートナーズ

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