■なぜ2017年に『moon』を紹介したのか
そもそも私が一体誰なのか、『勇者ああああ』とは何なのかについて少しご説明いたします。
3年前の2017年3月、私は4月から始まる『勇者ああああ』というゲームバラエティ番組の「ゲーム芸人オーディション」に参加することになりました。当時コンビ解散直後という立場で、ピン芸人としてはまだ首も座っていなかった私は当然、ゲームネタという高貴なモノを持ち合わせておらず、オーディションでは「フリップをめくりながら『突然!マッチョマン』について語り続ける」というほとんどヤケクソみたいなネタを披露しました。
すると、その様子を見た番組プロデューサーの板川さんは何を血迷ったか「この人は何かの企画に使えるかもしれない」とひらめいたそうで、私は後日またテレビ東京に呼ばれることになりました。
そこで板川さんから「なんか自分が好きで人に勧めたいと思うゲームありますか?」と聞かれた私が『リンダキューブ』について思いのたけをぶちまけると、「これそのまま企画にしましょう」ということになり、後の看板企画「ゲーマーの異常な愛情」というコーナーが産まれました。
このコーナーは、ゲームを愛するタレントがそれぞれ異常に思い入れのある作品について司会のアルコ&ピースのお二人にプレゼンするというもので、初回のプレゼンターは私と太田プロの若手芸人・柿本の2人でした。この柿本という男は、『ゼルダの伝説』が好きだけど右と左が分からないのでそれぞれの手に赤と青のテープをつけて、後ろから父親に「赤!青!」と色で左右を指示してもらう方法でプレイしていたというとんでもないおバカエピソードの持ち主で、この企画における「大オチ」を任されていました。
つまり、その前にプレゼンする私は彼のいわば「前フリ」的な立ち位置で、お笑い芸人でありながら私に求められたのは「笑いはいらない。とにかくゲームを大真面目にプレゼンする」ということでした。
そして収録当日。私はピン芸人なり立てであったこともあり、このチャンスで何か結果を残さなければ、見出してくれた板川さんのためにも、という思いで必死に『リンダキューブアゲイン』をプレゼンしました。結局、現場ではあまりウケず、収録的にも「これ、バラエティとして大丈夫だったのかな?」という空気が流れました。
今思えば、ネタも実力もない無名の芸人がバカ真面目にゲームのプレゼンをしただけですから、バラエティ的に盛り上がらないのは当然ですし、「前フリ」はウケなくて当たり前なのですが、収録後の私は現場でドカンドカン笑いを取る柿本の姿を見てとても落ち込んでいました。しかし、板川さんは「面白かったです。絶対イケますよ」と声を掛けてくれました。当時の私はその言葉を信じるしかありませんでした。
そして、2017年5月にこのコーナーがオンエアされると、「まさか2017年にリンダキューブをテレビで見ることができるとは!」「なんだこのゲーム面白そう!」「この男は何者だ!?」と予想外の好評を博し、ド深夜番組でありながら放送後にはヤフー検索ワードランキングで『リンダキューブ』が2位に入るという快挙を成し遂げました。予想外の大反響に驚く私の元に板川さんから「次は何にします?」というメッセージが届き、「またチャンスをいただけた!でも次コケたら意味がない!絶対に外せない!」と直感した私はすぐに「『moon』でお願いします」と返しました。
これがテレビで20年前に発売されたゲーム『moon』をプレゼンするに至った流れです。そして、この時の決断が後に大きな意味を持つことになるのでした。