■世の『moon』ファンたちが呼び起こしたテレビの奇跡
『moon』という作品は発売当時よりも、その後ネットで徐々にその存在が広まっていったという側面があるため、ネットには『moon』ファンが大勢いましたが「当時周りでプレイしている人はいなかった」という方が大多数で、かくいう私も『moon』の話がしたいけどできる人がいないという状態でした。そんな折にテレビで『moon』が紹介された!ということになり、深夜番組ではありますがたくさんの『moon』ファンの方に喜んでいただけました。そしてそれは、私の狙い通りでもあったのです。
初めて『リンダキューブアゲイン』をプレゼンした際、私のもとに「リンダをプレゼンしてくださってありがとうございます!」という声がいくつも届きました。一瞬、「作り手でもないのにどうしてありがたいのだろう?」と思っていましたが、逆の立場で考えたらその答えはすぐに出ました。
それは『リンダキューブ』の話をネットでたくさんの人が語る、みんなが『リンダキューブ』に興味を持つ、ということは『リンダキューブ』の話ができるチャンスが得られたことと同義なのです。
ネットは「自分に興味のある情報を深く知ることができる」のに対し、テレビは「自分に興味がない情報でも自然と知ることができる」という側面があるので、ゲームは好きだけど『リンダキューブ』は知らないという人など、自分で興味を持って調べないと出会えないはずだった昔の作品の情報をたくさんの人に届けることができたのです。
普通、テレビ番組で扱うゲームといえば「誰もが知っている名作」か「最新作」のどちらかで、「昔出たマイナーな名作」を扱うことはほとんどありえないと言っても過言ではありません。
その奇跡を起こしたのが番組プロデューサーの板川さんであり、番組を見ていた視聴者の熱いゲームへの思いなのです。この実感を1本目のオンエア後に感じていた私は『moon』をプレゼンすればきっとみんな喜んでくれる、と確固たる自信がありました。それだけこの作品には人を魅了する力があるし、この作品のファンは「思いを語り足りていない」「もっと話題にしてほしい」と強く思っているだろうと思ったのです。
結果として『moon』プレゼンは大成功。そして、ここで先ほど申し上げた木村さんの言葉「ヤマクエさんのプレゼンが1つのきっかけですよ」に戻ってきます。