■オルゴ・デミーラ様のカリスマ性
ここまで聞いてもまだ「ちょっとすごいけど、ほかのラスボスとどう違うの?」と思われている方も多いかと思います。なので、少しオルゴ・デミーラ様のカリスマ性について補足させてください。
まずオルゴ・デミーラ様は主人公一行に、「お前達の命はどこまでいってもお前達の物」「神のために使うべき物ではない」と、発言します。
本来、世界征服を目論むラスボスであれば、自らを討たんとするものはすべて滅ぼそうとしますよね? しかし、オルゴ・デミーラ様はそのような野蛮な真似はしません。もしかしたら、「まだ回復中だから待って」的な意味も含んでいたかもしれませんが、まあオルゴ・デミーラ様に限ってそのようなことは断じてありえないでしょう。
主人公たちに「お前達の命はどこまでいってもお前達の物」と告げる、つまり「無闇に命を捨てるな。逃げても良いぞ」と語りかけるわけです。ここにオルゴ・デミーラ様の信念が見える気がしますよね。
人間たちを滅ぼすことが目的ではない。人間たちを絶望に追い込み世界を掌握することが目的である、という意思表示であるようにもとれます。
さらに上記にも挙げましたが、各世界を絶望に追い込んだときの手法は「本当に怖いのは人間」とプレイヤーに考えさせるようなえげつないものが多いのもポイントです。ただ人間たちをその力でつぶして滅ぼしていくのではなく、人間の欲深いところや自分の保身に走ってしまう弱い心、大衆心理などなど、「人間の汚い部分」を完全に理解し考えたようなものが多いということ、それだけ人間を支配する能力に長けていたわけです。
神様一行と渡り合える戦闘力に確固たる信念、そして頭の良さ、という支配者が持つべき「三種の神器」ともいえる能力を兼ね備えていることから、非常にカリスマ性が高いと言えるでしょう。
それなのに、ドラクエシリーズのラスボスの中であまり人気はありません。その理由の多くは見た目の気持ち悪さが原因であると強く思っているのですが、仮にもう一つ上げるとするならば「主人公たちが大して苦戦しないこと」も原因かもしれません。
先ほども記したようにオルゴ・デミーラ様は「万全のコンディション」で主人公たちと戦うことができないということもあるのですが、本作の主人公一行はシリーズの中でも特に強いのです。
まず「どとうのひつじ」や「つるぎのまい」など比較的容易に習得できる技がめちゃくちゃ強力なバランスである本作において、オルゴ・デミーラ様と対戦するまでにはパーティがかなり育っており「アルテマソード」といった超強力な技を「パーティ全員」が覚えていることも多いということ。
そして第4形態まであるにもかかわらず、最終形態が実は一番守備力が低く、「ルカニ」や「せいけんづき」まで効いてしまう始末になってしまうということ。これらのせいで「そんなに強くなかった」と思われてしまいがちなのです。しかし勘違いしないでほしいのは、これはオルゴ・デミーラ様が弱かったのではなく、「知らないうちに努力を重ねてきた」プレイヤーと、その努力を楽しめるようなシステムを作った制作チームが素晴らしいのであり、オルゴ・デミーラ様はけして弱くはないのです。
後に登場した『ドラゴンクエスト11』のウルノーガもかなりカリスマ性の高さ、ボスとしての功績、を考えれば「最強」の座を脅かしかねない存在ではありますが、それはまた別の機会にお話ししましょう。さすがにここまで『ドラクエ7』のネタバレをしまくっておいて、『ドラクエ11』のネタバレまでしてしまうのは気が引けますからね。