■ゲームライターが起こした「あきれた事件」も

 現在活躍中のプロゲーマーを見ても分かる通り、“ゲームがうまい”というのはひとつの「特殊能力」と言っても過言ではありません。当時とくに飛び抜けて上手なゲーマーが台頭するきっかけを生んだのが、『ストリートファイター2』(カプコン)を筆頭とした対戦格闘ゲームブームでした。

 ただゲームがうまいだけのプレイヤーは、ゲームセンターにもいましたが、一流のゲームライターや、ゲーマーとして活躍する人はちょっとケタが違います。反射神経の良さ、コマンド入力の速さと正確さなどは当たり前のことで、いわゆる普通のプレイでは分からない“裏技的なモノ”を見つけだす能力や嗅覚に秀でていました。あらかじめ「そういう技がある」認識でプレイするのと違い、ゼロから何かを見つけ出し、それを技として確立させるのは、まさに“傑出した才能”でした。

 しかし、そんな才能をゲーム攻略に全振りしたせいなのか、中には「人間的にどうなのよ?」と思われる行動を起こすライターやゲーマーも……。

 たとえば、編集部で攻略本の作業中に、いきなりトイレの窓から逃亡。心配して周辺を捜索すると、そのゲーマーは近所のゲーセンで見つかり、逃げた理由は「どうしても対戦がしたかったから」だったことに衝撃を受けました。

 また、自宅まで原稿を受け取りに行った編集者を、不審者として警察に通報したライターもいます。その理由を聞くと「原稿を書いていなかったから」という、まるで宿題をしてなかった子どものような言い分にあきれたものです。

 今となっては笑い話ですが、当時の攻略本制作現場ではこうした“事件”が頻繁に起こっていたのも事実。ゲーム攻略という性質上、ライターやゲーマーには大学生くらいの社会人経験のない若手も目立ち、仕事という認識よりは趣味の延長線上くらいに軽く考えていた人も多かったのかもしれませんね。

(文・犬山次郎)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
全ての写真を見る