福山 その感覚を共有するクオリティの高いスタッフがいる現場を体験することは、僕ら役者にとっても絶対に大切なことですよね。若い世代の役者には、そこで学べるものを吸収してもらうしかないと思います。

鶴岡 そうだね。私が音響マンとして新人だった頃は、家弓家正さんや小川真司さんというような、それこそ日本語の生き字引きのような俳優さんたちがいて、ずいぶんと鍛えられた。“さすがに今回ばかりは家弓さんが間違っているんじゃ……”と思っていても、これがすべて正しいんだから。あれには参ったよね(笑)。

福山 スタッフがキャストから日本語について学ぶというのは、いまではなかなか見られない光景ですね。

鶴岡 もちろんアニメのジャンルも多様化しているし、すべてのセリフを正しい日本語で、という時代ではないけれど、そういう環境で鍛えられたことがあるから、正しい日本語を聞くと“ああ、日本語って美しいな”と思うんだよね。今でも作品やキャラクターに端正な感じを持たせたかったり、品格を出したかったりするときには、やっぱり正しい日本語を使うべきだなって思う。

福山 僕も最近になってようやくそういう感覚が分かるようになりました。恥ずかしながら、中学生レベルの国語の勉強をもう一度始めてみたりもしているんですよ。僕ら声優が大切にすべき日本語って、おそらく情操教育としての「国語」にその源泉が詰まっていると思っていて。

鶴岡 ほんと、福山って勉強家だよね。いや、最初に会ったときにはそんな感じしなかったんだけど、それから毎年仕事をしていくとわかるものなんだよ。“ああ、こいつはすごく勉強しているな”っていうのが。

福山 それを簡単に見抜かれるのは恥ずかしいですけど(笑)。やっぱり、その時々に出来ることはなんでもやろうとは思ってやってきました。

鶴岡 声優としての成長もそうだし、業界に対する危惧もそうだけど、やっぱりプロフェッショナルだと思うよ。

福山 うわ、嬉しいです。鶴岡さんから褒められることなんて、まずないですから。

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 鶴岡陽太氏をゲストに対談を行った第2回「福山潤のプロフェッショナルトーク」。現在発売中の『声優MEN』では引き続き、2人が声優論について語っている。

福山潤/ふくやまじゅん
11月26日生まれ、大阪府出身。2007年、初代声優アワード主演男優賞。『無敵王トライゼノン』で初主演。代表作に『コードギアス反逆のルルーシュ』(ルルーシュ・ランペルージ)、『中二病でも恋がしたい!』(富樫勇太)、『WORKING!』(小鳥遊宗太)、『青の祓魔師』(奥村雪男)、『暗殺教室』(殺せんせー)、『真夜中のオカルト公務員』(宮古新)など。近年はアーティストとしても活躍。

鶴岡陽太/つるおかようた
4月28日生まれ、東京都出身。楽音舎代表。数多くのアニメ作品で音響監督を担当。近年の音響監督作に、『物語シリーズ』、『けいおん!』、『魔法少女まどか☆マギカ』、『Free!』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、映画『聲の形』、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』、『リズと青い鳥』、『劇場版響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』など。

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