福山潤『声優MEN』で音響監督の“恩師”とプロ論交わす「∀ガンダムのキースは二度とできない」の画像
鶴岡陽太氏(左)と福山潤
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 現在発売中の『声優MEN vol.17』(双葉社)で、声優の福山潤が各業界のプロフェッショナルと対談していく連載「福山潤のプロフェッショナルトーク」の第2回が掲載され、アニメーションの音響監督として長らく第一線で活躍する鶴岡陽太氏がゲストとして登場した。

 福山にとっては1999年の『∀ガンダム』から20年を超えるつきあいであり、「恩人」と呼んではばからない存在の鶴岡氏。その言葉の真意についてはもちろん、アナログからデジタルへと急速に変貌を遂げてきた音響業界と声優業界を振り返りつつ、さらにこれから先の業界の未来の話までをたっぷりと伺った。

写真/小嶋淑子
文/岡本大介
ヘア&メイク/杉野智行

■福山「完全に『恩人』なんです」

福山 今日は鶴岡さんをお迎えできて、本当に嬉しいです。

鶴岡 私も嬉しいよ。最近はアーティストデビューもして、すっかりスターだよね。

福山 すぐイジろうとする(笑)。鶴岡さんとは『∀ガンダム』からのつきあいですから、もう20年以上になりますよね。

鶴岡 『∀ガンダム』のキースがすごくナイーブなキャラだったから、最初は私の中では無垢なイメージが強かったね。いまは全然違うけどさ(笑)。

福山 すっかり世俗にまみれてしまいまして(笑)。でも当時の僕は事務所に所属して2年目の終わりという時期で、瀬戸際だったんですよね。ここで何かしらの結果が出せないと声優として終わるというタイミングだったので、『∀ガンダム』での起用は本当に嬉しかったというか、助かったというか。

鶴岡 でも最初はオーディションに落ちたんだよね?

福山 そうなんです。めちゃくちゃ予習もして気合いも入れてオーディションに臨んだんですけど、いざ本番で渡された原稿を見たら、事前に渡されていたものとまったく違っていて。パニックになって棒読みするしかできず、その後、一時間くらいスタジオのロビーでうなだれていたんです。マネージャーさんから「早く帰れ」と言われても、人生で最後の収録現場だと思っていたので、甲子園で負けた高校球児のような心境で動けませんでした(笑)。

鶴岡 そこから奇跡があったんだよね。

福山 今ではとても考えられないですが、『∀ガンダム』のオーディションって実際に役者同士がマイク前で掛け合う方式だったんですよね。僕がロビーで傷心に浸っているときに、「掛け合い相手の役者さんが帰っちゃったから代わりにセリフを読んでくれ」って呼ばれたんですよ。

鶴岡 それで困っちゃってね。

福山 そのときにたまたまロビーにいた僕に声がかかったんですよ。僕としては一度死んだ身だし、しかもそこで渡されたセリフは事前にもらっていたものと同じだったので、これはもう思いっきりやってやろうと。結局その役は落ちたんですけど、目に留まってパン屋のキースというキャラクターをやらせてもらうことになって。今考えると100%ラッキーなだけですが、結果的に声優を辞めずに済んだので、完全に「恩人」なんです。

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