■少年フジタを絶望させた「ファミリーベーシック」
僕はよく「それだけゲームが好きなのに、クリエイターになろうと思ったことはないのですか?」と聞かれることがあります。……実は小学生の頃すでに断念していたのです。それは、小2のときに買ってもらった、ゲームが作れる『ファミリーベーシック』に挫折したから……。
『ファミリーベーシック』というのは任天堂が1984年に発売したファミコン用の周辺機器です。BASIC言語を組みこんだカセットと、ファミコンに接続できるキーボードがセットになっていて、ゲームのプログラムを打ち込むことができたんです。
この頃の僕は、自作のゲームのシステムや構想をノートに書き溜めていた子どもで、ノートを見たクラスメイトから「こんなゲームがあったらやりたい」と褒められていたんです。なので、このファミリーベーシックを買うことで、自分のゲームが世の中に知れ渡るかもと大興奮していたんです。ですが実際はそううまくもいかず。ゲームを作れるもなにも、複雑さとボリュームのあるマニュアルで、何もできず何も分からず「クソゲーだった」と自分に言い聞かせて数日で投げて放置してしまいました。
ゲームを作るということが、どういうことなのか思い知らされ、恐ろしいほど早く夢を諦めさせてくれたのが、この『ファミリーベーシック』です。何も分からなくてやめたと言うのが恥ずかしかったため、以降『ファミリーベーシック』の話はいっさい出さず、永久的に押し入れに封印しました。
値段も本体と同じぐらいに高かったので、あまり買っている子はいなかったのですが、それなりに楽しんでいた同級生もいました。小2だとしても、ここまでファミリーベーシックを理解できないのはやばいと思い、この話は触れないようにしていましたが、近年、同年代のバカリズムさんが「ゲームが作れず投げた」と同じようなことを言っていたので、やはり子どもには難しかったんだと、少しほっとしました。