「『終わっても続いているのがマンガなんだな』という感覚があって」

――そんな時にでも作業をされるとはスゴイですね! アナログな作画をされているとうことでしたが、そこにこだわる理由などあるのでしょうか?

 紙にペンで描くのが好きなんですよ。力の入れ具合で線の太さが変えられるのがすごい楽しくて。
 それと光に対して目がそんなに強くないので、ずっとモニターを見なければならないデジタル作画は厳しいのかな、と思っています。

――作品のイキイキとしている線から楽しさが伝わります。さて、長期連載が続いている『ファイブ』シリーズですが、その中でも思い入れのある回はありますか?

 もともと『ファイブ』の1話目から6話目くらいまでが全部読み切りで、載ってる雑誌がすべて違ったんですね。
 そのあとようやく連載が始められたのが「文化祭」の回だったので、やはりその回には思い入れがあります。第2のスタートですからね。

――いまお話がありましたが、連載が始まるときにプレッシャーはありましたか?

 ありました。連載が始まったときは、「全4話、単行本1冊分でお願いします」という形で始まりましたので、当時はとにかくその4話に全精力を注ごうと思って描きました。
 迷惑をかけたくなかったので、4話分のネームをキッチリ描き上げてから作画に入っていきました。だから実は幻の最終回があったんです。
 ところが連載が始まってすぐに、「4回じゃなくて8回で考えてほしい」と言っていただいて。最初の4回で文化祭の1日目を描いたので、「残りの4回で文化祭の2日目を描けるな」と考えました。
 そのときに「やってやれ!」という思いから、悪ノリで描いたのが「テニス」の回だったんです。爪痕を残さないと連載させて頂いた意味がないなと思って。
 それで、8回に直して制作していたら、その途中で「やっぱり12回で考えてほしい」って言われて、さらにその後12回の手前で最終回を考えなくていいって言われたんです。

――なるほど、そんな風にして徐々に連載期間が伸びていったんですね。連載回数の限定がなくなった時はどんな心境でしたか?

 言い方は悪いんですけど、ちょっと振り回されてる感じがして(笑)。4回目、8回目、12回目にそれぞれ最終回も考えたわけですから。
 それでも今では振り回されてよかったな、と思っています。仕事をいただくことは当たり前じゃなくて、それは読み切りでも、連載でも変わらない、ということが分かりましたから。
 「終わっても続いているのがマンガなんだな」という感覚があって、話は終わっているけどキャラクターたちの人生は終わってないという思いがあるんです。

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