「『描く時に全てを注がないと』と思って作画しています」
――なるほど、キャラクターによって大きな差があるんですね。作画ではどんなところにこだわっていますか?
雑誌に載った時に画面が小さくなってしまうので、オーバーに描くことはすごく気を付けています。
スマホなどの一番小さいサイズで読まれる時に、当初思っていたことの3倍くらいの迫力で描かないと、画面では伝わらないな、と思っています。
パソコンなどを使ったデジタルな描き方だったら後で調整ができるかもしれないですが、私の場合は紙とペンのみのアナログな描き方なので、「描く時にすべてを注がないと」と思って作画しています。
それと、ベタ【※画面の黒塗り部分】はたくさん使っているかもしれないですね。少女漫画を描いていたときは、髪の毛や洋服の一部以外は画面が白かったんですが、いまでは「洋服や髪の毛をすべて黒で統一させちゃえ」と、描いてみたりもします。華がないなとは思いますが、メリハリはあるという気がしています。
ベタの影響を受けたマンガは『BLEACH』です。ベタが美しいんですよ。バックが白くて人物の羽織っているものが黒い、しかも背景に埋もれることなくキャラクターが立っている。このワザはすごいと思います。
――作画といえば、『ファイブ』はアクションシーンを描かれることが多いと思いますが、映画などのシーンを参考にすることはあるんでしょうか?
作画のアングルを決める時に、頭の中でキャラクターを立ててカメラを動かしていくんですが、実際には本物のカメラでは撮れない位置からでも、頭の中では見えているんですね。
ですので、映画は観に行きますが、勉強としてではなく、マンガ制作のあいだに脳を休めるために行くという感じです。
ネームをカタチにしたときに、映画を観に行って脳を休めて、終わったらカフェに入ってもう一度ネームを見直します。そうすると、「やっぱりココだめだな」という風に気付くようになるんです。
でも、その作業が必ずあるから、映画には誰も誘えないんですよね(笑)。
――まるでマッサージや整体に行くみたいな感覚で、映画を観に行かれているんですね。
そうですね。マッサージの施術中にアイディアがひらめくこともあります。
個人的に親しくなったマッサージ師さんのところに伺っているときは、ひらめいたら施術をストップしてもらってネーム作業をしたこともありました。